プールサイドマンの映画専門家レビュー一覧

プールサイドマン

第29回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞を受賞した人間ドラマ。北関東郊外の小さな町で屋内温水プールの監視員をしている水原。ある日、流行り病で欠員が出た隣町のプールへ、嫌われ者の同僚・白崎と共に応援として出勤することになるが……。「そして泥船はゆく」の渡辺紘文・雄司兄弟が監督・製作を務めた。主演は、本作が映画初出演となる今村樂。第52回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭正式出品作品。
  • 評論家

    上野昻志

    タ、イ、ク、ツ、です。でも、ただの退屈とは、ちょっと違う。作り手は、見る者に、このプールサイドマンの毎日毎日、昼間の仕事も、終わってから寝るまでの時間も、まったく同じことの繰り返しに耐えられるかと突きつけているからだ。それは正直、なかなか辛い。だから、終始無言の主人公の周りに流れる、テロを伝えるニュースや、車に同乗した同僚の不平不満を口にする言葉に、耳を傾けることになる。そして、ある瞬間、画面一杯の魚や人の波の映像に不意を撃たれるのだ。

  • 映画評論家

    上島春彦

    どう考えても長いのだが長さに意味がある、と監督が決意の下、撮っていると分かる。特撮による「ぎっしり水上に詰め込まれた海水浴客」風景と、閑散とした室内プールの監視員の孤立とがコントラストを成し、日常即異常という現代感覚を醸し出す。そのまま使用されたニュースの音声を聞いていると、トランプさんは最初から異常な人だったとよく分かるが、私はヒラリーも嫌い、どっちもどっちか。これを見ると監督デビュー作「そして泥船はゆく」を見たくなるという消極的価値はある。

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    主人公のミニマムな日常を丁寧に描くことで世界の歪みと苛立ちが浮かび上がる。テロのニュースが流れるだけで、声高に主張するわけでも、これ見よがしの描写があるわけでもなく、モノクロの静謐な画面で職場と映画館と自宅の往復しか描かれないが、緊張感が途切れず退屈しない。団地を舞台に日常と性を丹念に描き、最後に空港爆破へ向かう若松孝二の「テロルの季節」を想起させるが、若松が最後に事を達成させるのと違い、闘争ではない個的衝動を静かに醸成していく姿が胸を打つ。

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