ヒトラーに屈しなかった国王の映画専門家レビュー一覧
ヒトラーに屈しなかった国王
第二次世界大戦当時、ナチス・ドイツに抵抗し、国の運命を左右する決断を下したノルウェー国王の3日間を描いたドラマ。1940年4月、ナチス・ドイツ軍がノルウェーに侵攻。降伏を拒否したノルウェー国王ホーコン7世は、首都オスロを離れるが……。ホーコン7世を演じるのは、「007 スペクター」のイェスパー・クリステンセン。監督は「おやすみなさいを言いたくて」のエリック・ポッペ。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
またもやナチス/ヒトラー映画。邦題の通りの史実を描いた作品で、英語題名は『王の選択』。監督ポッペはノルウェー出身だが、キャストにはホーコン7世を演じる、近年のラース・フォン・トリアー作の常連で、「僕とカミンスキーの旅」でも好演していたデンマークのイェスパー・クリステンセンを始め、スウェーデン、オーストリア、ドイツなどEUの実力派俳優たちが結集している。まるで舞台劇を撮ったドキュメンタリーのような、不安定なキャメラと細かいシークエンスが特徴的。
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映画系文筆業
奈々村久生
ノルウェーの現ホーコン王太子といえば、シングルマザーで麻薬使用歴もあったメッテ=マリット妃との結婚で世間をざわつかせた、かなりリベラルなお人柄。しかしその曽祖父に当たるのがこの映画の主人公ことホーコン7世だとなれば腑に落ちもする。走る列車内をナチスの爆撃から逃げ惑うスリリングな一幕で脅威を見せつけた末、最後の決定を下す局面の国王をとらえたシーンは、それを見守る人々の様子を含め、ドキュメンタリーのようにその場の緊張と不安が伝わってくるようだ。
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TVプロデューサー
山口剛
どうしても、敗戦の「御聖断」を下した我が天皇と比較したくなる。孫と遊び戯れ、戦火の下を逃げまどう国王だが、苦渋の選択を迫られた際、最後の拠り所となるのは、自分は国民に選ばれた王であるという矜持である。ヒトラーに屈しなかったかどうかはともかく、心中の苦悩はドラマティックだ。あくまで正論を吐き戦地に赴こうとする王子、ノルウェーに平和を願いながらもヒトラーに背けないドイツ公使、ナチス嫌いのその妻、傍系の人物がそれぞれうまく描かれているのがいい。
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