風の色の映画専門家レビュー一覧
風の色
「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨンが監督、北海道と東京を舞台に同じ姿の男女二組を描く、日韓合作の幻想的なラブストーリー。亡き恋人とそっくりな女性がいるとの言葉を追い知床に来た男。そこで会った彼女と似た女性は、彼と瓜二つの恋人を亡くしていた。クァク・ジェヨンの原案を基にした、『花いくさ』など映像化が相次ぐ鬼塚忠の同名小説が原作。「L-エル-」の古川雄輝と「向日葵の丘・1983年夏」の藤井武美が一人二役で交錯する二組の男女を演じる。
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評論家
上野昻志
愛する女が死んだと思い、失意のどん底に落ちた男が、マジシャンになろうと決意したんだと。ま、何になろうと勝手だけど、マジシャンになると心が癒やされるのか!? その原因は先代マジシャンにあったという作りも、瓜二つだと思った女が、実は……だったという話も、無理矢理作った感じは否めない。大がかりなマジックの仕掛けには、手間も費用もかかったと思うので、その分★一つおまけするが、どうせやるなら、もっと違うことにエネルギーを使った方がいいのでは?
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映画評論家
上島春彦
この監督はトリッキーな趣向が得意技で、しかも本作のテーマがマジシャン。そうなるとクリストファー・ノーランの「プレステージ」を思い出してしまう。フーディーニを描いた「魔術の恋」よりもね。どこかで意識していたはずだ。でも本作の方が私は好み。大がかりな仕掛けと小技とが「不可能な恋愛」譚に組み込まれており、トリックのためのトリックになっていないから。また北海道ご当地映画という側面も効果を挙げている。手品には必ずタネがあるが真実が芽吹くタネなのだ。
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映画評論家
吉田伊知郎
生き写しの生者と死者をめぐる北海道を舞台にした恋愛劇だけに「Love Letter」の影響濃厚だが、メソメソしたモノローグが多用されると岩井俊二的というより新海誠的。設定に次ぐ設定が過剰に上乗せされ、30分が過ぎた時点でどこまで広がるか不安を覚えたほど。重大な出来事が台詞だけで軽く流され、マジックを魔術として描くのかトリックとして描くのかも判然としないご都合主義だが、これくらいやってのけないと純愛映画なんて撮れるかという居直りぶりは支持。
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