キセキの葉書の映画専門家レビュー一覧

キセキの葉書

実話に基づくヒューマンドラマ。兵庫で障害児の娘を育てている美幸。郷里・大分の母が認知症と鬱を併発させるが、帰郷できない美幸は、気持ちの明るくなるハガキを毎日母に送ろうと思いつく。主演の鈴木紗理奈がマドリード国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞。監督は、「邂逅 KAIKOU」のジャッキー・ウー。2017年8月19日より東大阪・布施ラインシネマにて先行上映。
  • 映画評論家

    北川れい子

    テレビで紹介された感動実話の映画化だからといって感動するとは限らない。主人公の描き方というか、演出が素人写真の場面、場面をつないだように平面的で、観ていても何一つこちらに入ってくるものがない。いや、障害のある子どもの世話と、故郷に住む認知症の母親への対応でウツになりかかった主人公が、ある老女の一言で気持ちを立て直すだけではなく、自己実現にまで至るという話自体は、凄いな、リッパだな、と思う。けれどもこれは実話としての情報にすぎず、映画は薄っぺら。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    よく仲間内で関西人の勢いこんだ上京の例として、鈴木紗理奈が大きな荷物をしょって新宿コマ劇場前にやってきておもむろに「負けへんでー!」と叫ぶ感じ、というよくわからない喩えというかイメージを語っていたのだが、それを言う奴らには私も含めて意気込みなしに上京した関西人がおる。その私がなんとなくのうちに離れた関西に叱られるのである。お前は鈴木紗理奈のようにど根性で生きとるんか、世界に対してええ声で、負けへんでー!言えるんか、と。本作がそう言うのである。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    脳性麻痺の娘を抱えた主人公の行動範囲は、ほぼ団地の敷地内。その限られた“社会”の中で様々な出来事が起こり、多様な“世界”があることを本作は提示。だからこそ、小さな出来事の中にも“幸せ”があるのだと描いている。冒頭「明るないとやっとられへん」と、阪神大震災に遭った主婦たちは朗らかに語る。その言葉は、何の前触れもなく人生に突然訪れる困難や試練に負けない、あるいは、自嘲することで牽制する、困難や試練を実際に乗り越えてきた人々の魔法の言葉なのである。

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