ネリー・アルカン 愛と孤独の淵での映画専門家レビュー一覧

ネリー・アルカン 愛と孤独の淵で

フランス文壇に衝撃を与えたカナダ人女性作家ネリー・アルカンの伝記ドラマ。高級エスコートガールだった自らの過去をモデルにした自伝的小説でデビューしたネリーは、一大センセーションを巻き起こす。しかし、自ら生み出した分身たちによって蝕まれていく。監督・脚本は、「ある夜のセックスのこと モントリオール、27時」のアンヌ・エモン。DVDタイトル「ネリー 世界と寝た女」。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    大部分の観客は、主人公が自殺するという結末を知った上で本作を見始める。カナダ仏語圏ケベック州の美人作家である彼女は生前、メディアアイコンであったし、精神障害を想起させる危うい存在でもあった。自殺という最期にむかって逆算的に映画は進行し、主人公の精神は崩壊していく。これほど意外性を欠いた物語はあるまい。それでも退屈せずに見られるのは、主人公の多重化し複数化する苦痛を見てあげたいという不遜な欲望を観客に?きたてる誘惑の力があるためだろう。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    高級娼婦が自分の半生を小説にしてベストセラーに。カナダでは彼女の存在は超有名。そこを前提として映画は作られている。その実像はこうだったんですよ。あるいはこう想像すると。が、彼女の存在を知らないこちらは、ただ戸惑うだけで。どうもこの脚本、独りよがりの匂いが。過去・現在・小説部分・想像が錯綜する展開。しかしどのエピソードもあまり刺さらない。主人公の錯乱が、作り手の混乱にも思えて。彼女への想いが強すぎて、逆に空転したか。どこか客観の視点を置き忘れた印象。

  • 映画ライター

    中西愛子

    仏文壇に彗星のごとく現れ、36歳という若さで自ら命を絶ったネリー・アルカン。高級娼婦だった過去をモデルにした小説で、たちまち人気を博し、社交界のセクシー・アイコンにもなっていく。彼女のさまざまなペルソナを交錯させながら、女性として、作家としての苦悩を炙り出す。実在のイケイケ風ネリーの顔立ちおよび雰囲気と、ネリー役を演じる女優のそれは随分違って、デリケートな感じ。パンチに欠けているこのキャスティングは、伝記映画になっていない気もするのだが。

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