一陽来復 Life Goes Onの映画専門家レビュー一覧

一陽来復 Life Goes On

東日本大震災から6年を迎える宮城県・岩手県・福島県を舞台に、手探りで前進しようとする市井の人々を追ったドキュメンタリー。家族を失った夫婦や震災を風化させないための語り部、伝統を受け継いでいく農家など一人ひとりの確かな歩みにカメラが寄り添う。ナレーションを「SPY_N」「サバイバルファミリー」の藤原紀香と、声優やタレントなど幅広く活躍する山寺宏一が担当。「シネマの天使」「サンマとカタール 女川つながる人々」などでプロデューサーを務めた尹美亜の初監督作。撮影監督・共同監督を「築城せよ!」の辻健司が務める。
  • 映画評論家

    北川れい子

    東日本大震災のドキュメンタリーは、切り口や取材対象がどう異なっても、ドキュメンタリーとしてのストレートな評価は許されないような雰囲気を感じてしまう。取材されている方々のことばやリアクションに、こちらは返すことばがないからだろう。その点、「一陽来復」は、被災した方々の6年後が映し出され、笑顔で前向きに語る方が多い。が、他のドキュメンタリーやテレビドキュで見かけた方が何人かいて、こう言っては何だが、取材慣れしている方も。という素直なドキュ。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    東日本大震災のドキュメンタリーでは、苛烈な体験を経たこととそのことについて考え続けざるを得なかったために無名のひと普通のひとが多くの至言名言を孕み、それを観る者に告げる。それらを観るたびに慄然とする。あの震災については社会の脊髄反射的システムである報道だけでは足りなかった。風化が明確に意識される現在においては震災ドキュメンタリー映画の記録性と長いタイムスパンでの伝達力はより重要度を増しているとも思われる。何本あっても足りないところにまた一本。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    東日本大震災によって引き起こされた人災に翻弄された人々を描いた本作に、政府や大企業、政治家や資本家は登場しない。寧ろ、市井の人々が生き残ったことへの後ろめたさを抱えながらも、恨み辛みを乗り越えて生きてゆこうとする姿が描かれる。人の数だけドラマがあり、それでも人生は続いてゆくという現実との対峙。朝靄に包まれた田んぼが導くのは「先がよく見えない」ことへの不安のようだが、〈冬至〉を意味するタイトルは「やがて春がやって来る」という微かな希望をもたらす。

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