おみおくりの映画専門家レビュー一覧

おみおくり

高島礼子が女納棺師に扮したヒューマンドラマ。幼い頃、両親を交通事故で亡くし、その記憶に苦しんできた亜衣は、葬儀の場で女納棺師の満島弥生に出会う。自分と向き合うため、満島に弟子入りする亜衣だったが、満島には愛する人との悲しい過去があった……。共演は「八重子のハミング」の文音。監督は「棒の哀しみ」の伊藤秀裕。
  • 評論家

    上野昻志

    女性納棺師の話といってもなあ、すでに「おくりびと」があるからね。どうしても、二番煎じという印象は拭えない。描く世界が狭いだけに、なおさら。そのぶん、高島礼子演じる納棺師も、文音扮する弟子も、それぞれ心に深い傷を負っているという設定にすることで陰影をつけようとしているのだが、それが弱い。残念ながら説明に流れてしまっているのだ。それを超えようとしたためか、二人のアップがやたら多い。アップは困ったときだけ、という吉村公三郎の教訓は、とうに忘れられたか。

  • 映画評論家

    上島春彦

    納棺師という職業はすっかりおなじみになった。こちらでは死化粧エキスパートとして描かれている。葬儀の式次第との関連が弱いのは意図的な処理なのかな。エピソードが七つと盛り沢山、かつ師匠と弟子にもそれぞれ死者をめぐる事情がある。監督はてきぱきとさばき飽きさせないが、かえって芯がない印象に。ただラストの挿話で分かるように、ヘヴィーになりがちなところを明るい旅立ちとして解釈する姿勢に救われる。表情のクロースアップが多すぎるものの、氷見の風光明媚さで相殺か。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    極妻・高島で〈女おくりびと〉という発想は二匹目のドジョウ狙いとしては正しい。女賭博師などと同じ迫力で女納棺師(これだけで生計が立つのか)を屹立させる。単なる異業種モノに堕することなく、弟子入りした若い女が幼い頃に両親を事故で失くした記憶を引きずる核心部は、結婚を控えて同じ悩みを持つ弟も絡めた重層的なドラマを期待させるわりに弾けないのが残念。恩師の死にはしゃぎすぎる教え子たちの挿話以外は、死を深刻めかしすぎることもなく均衡の取れた描き方に好感。

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