グッド・タイムの映画専門家レビュー一覧

グッド・タイム

「神様なんてくそくらえ」で東京国際映画祭グランプリと監督賞の二冠に輝いたベニー・サフディとジョシュア・サフディが手掛けた犯罪サスペンス。ニューヨークの最下層で生きる兄弟が銀行強盗を計画するが、弟が警察に逮捕され、兄は奪回を試みる……。出演は「ディーン、君がいた瞬間」のロバート・パティンソン。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    アップを多用する映画は基本好きじゃないのだが、これは良い。兄弟監督が撮った兄弟の物語で、弟の方の監督が弟役を演じている。クライム・アクションなのだが、作品の主眼は犯罪の成り行きにはない。何よりもまず演技の映画であり、演技の細部を見せる映画だ。カンヌ受賞のワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの表現主義的な音楽は大変見事だが、あれがなかったら(兄弟だからというわけではなく)たとえばダルデンヌと比較されるような作品だと思う。あるいはカサヴェテス。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    血の気が多く短絡的な兄をロバート・パティンソンが思いのほか好演。金髪がヤンキーにしか見えない。ドラマがリアルタイムなので過去はほぼ描かれておらず、予想の斜め上を行く強引すぎる言動の数々はコントでも通用しそうだが、こいつはしょうがないと思わせる説得力がある。人間的な深みをほとんど感じさせないことで、逆に哀しみすら想起させるとは、なかなかに高度。どうしようもない虚しさの漂うエンドロールが切ない。カンヌで受賞したサントラはところにより主張が激しすぎ。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    計画性もないケチな銀行強盗が、知的障害の弟が捕まったことから予想外の深みに落ちてゆく。巧みに造形された脇役たちがいずれも印象深く、鮮やかな演出と相まって斬新なアメリカン・ノワールが誕生した。最下層のギリシャ移民の主人公を演じるロバート・パティンソンの演技と存在感はハリウッドの全盛時代のジャンル映画でキャグニー、ボギー、ガーフィールドたちが演じたアメリカ底辺のアウトローたちを彷彿させる。痛烈な現代アメリカ批判でもある。

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