きらきら眼鏡の映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
オーソドックスに引きの画面が中心で、金井浩人のアップなどは、神社のシーンだけではないかと思われるほど抑制した作り手の姿勢を好ましく思ったのだが……。彼が駅員として働く様子を丁寧に描いた点も悪くないし、きらきら眼鏡をかけているという池脇千鶴の明るさが、金井を惹きつける一方、余命わずかな恋人(安藤政信)にとっては、鬱陶しく、拒みたくなるという流れも頷けるのだが、全体にメリハリを欠いた印象を受けるのは、あの禁欲的な撮影スタイルによるのかもしれない。
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映画評論家
上島春彦
船橋市の御当地映画。ここは山から海、都会から田舎まで何でも揃っている稀有な土地柄で満遍なくロケも行き届いている。過剰に陽気でアグレッシブな女主人公と、逆に、受けに徹する芝居の男主人公との交流というのが演出上の特色。男は数年前に恋人を事故で失い、一方、女には余命いくばくもない恋人がいる。時間の流れと共に移り変わっていく両者の心情は良く捉えられていた。過去に囚われる男と未来志向の女、それぞれの物語がすれ違い、きっちり?み合うわけじゃないのが惜しい。
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映画評論家
吉田伊知郎
池脇千鶴だけに犬童一心と空目しそうになるが、「つむぐもの」で堅実な演出を見せた一利の方である。それだけに純粋すぎると思わせるベタな純愛劇ながら感情過多に陥らない引いた視点が穏やかに持続し、静かな語り口と池脇の柔らかな存在が際立つ。主人公が勤める鉄道会社のさり気ない描写が上手く、大半が改札と事務室ながら限られた空間を活かして主人公の日常を巧みに映し出す。この監督には同じきらきらでも、今度は易きに流れがちなキラキラ青春映画も手がけてもらいたい。
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