きらきら眼鏡の映画専門家レビュー一覧

きらきら眼鏡

森沢明夫の同名小説を映画化。恋人の死を乗り越えられずにいる明海は、一冊の古本がきっかけでいつも前向きなあかねと出会う。見たものを輝かせる“きらきら眼鏡”を掛けているというあかねだが、彼女も余命宣告を受けた恋人と向き合う辛い現実を抱えていた。監督は、「つむぐもの」の犬童一利。出演は、「この空の花 長岡花火物語」の金井浩人、「そこのみにて光輝く」の池脇千鶴、「GONIN サーガ」の安藤政信、ドラマ『半分、青い。』の古畑星夏、「覆面系ノイズ」の杉野遥亮、「万引き家族」の片山萌美。第21回上海国際映画祭正式出品作品。
  • 評論家

    上野昻志

    オーソドックスに引きの画面が中心で、金井浩人のアップなどは、神社のシーンだけではないかと思われるほど抑制した作り手の姿勢を好ましく思ったのだが……。彼が駅員として働く様子を丁寧に描いた点も悪くないし、きらきら眼鏡をかけているという池脇千鶴の明るさが、金井を惹きつける一方、余命わずかな恋人(安藤政信)にとっては、鬱陶しく、拒みたくなるという流れも頷けるのだが、全体にメリハリを欠いた印象を受けるのは、あの禁欲的な撮影スタイルによるのかもしれない。

  • 映画評論家

    上島春彦

    船橋市の御当地映画。ここは山から海、都会から田舎まで何でも揃っている稀有な土地柄で満遍なくロケも行き届いている。過剰に陽気でアグレッシブな女主人公と、逆に、受けに徹する芝居の男主人公との交流というのが演出上の特色。男は数年前に恋人を事故で失い、一方、女には余命いくばくもない恋人がいる。時間の流れと共に移り変わっていく両者の心情は良く捉えられていた。過去に囚われる男と未来志向の女、それぞれの物語がすれ違い、きっちり?み合うわけじゃないのが惜しい。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    池脇千鶴だけに犬童一心と空目しそうになるが、「つむぐもの」で堅実な演出を見せた一利の方である。それだけに純粋すぎると思わせるベタな純愛劇ながら感情過多に陥らない引いた視点が穏やかに持続し、静かな語り口と池脇の柔らかな存在が際立つ。主人公が勤める鉄道会社のさり気ない描写が上手く、大半が改札と事務室ながら限られた空間を活かして主人公の日常を巧みに映し出す。この監督には同じきらきらでも、今度は易きに流れがちなキラキラ青春映画も手がけてもらいたい。

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