彼女が目覚めるその日までの映画専門家レビュー一覧

彼女が目覚めるその日まで

壮絶な闘病経験を記したノンフィクション『脳に棲む魔物』をクロエ・グレース・モレッツ主演で映画化。記者のスザンナは突如物忘れがひどくなり、ついには全身痙攣を起こし入院。検査しても原因が判明せず悪化する一方の彼女を、家族と恋人は諦めずに支える。クロエ・グレース・モレッツが原因不明の病と闘う若手記者を演じたほか、「ベアリー・リーサル」のトーマス・マン、「ホビット」シリーズのリチャード・アーミテイジ、「ポンペイ」のキャリー=アン・モスらが出演。また製作に女優シャーリーズ・セロンが、抗NMDA受容体脳炎を患った当人であるスザンナ・キャハランが共同プロデューサーとして参加している。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    幾つになっても子役っぽいキュートさの抜けないクロエ・グレース・モレッツ的には勝負作と言えるだろう。「抗NMDA受容体脳炎」はいわゆる「悪魔憑き」の原因とも疑われている病気で、2007年に病名が付けられるまでは原因不明、治療法不明の難病とされていた。この病いに罹り、闘病の末、治癒した原作者と役名も同じであり、このことからもこの映画が原作の忠実な再現であろうとしていることがわかる。モレッツは刻々と進行する自己崩壊を熱演していて、一皮剥けた感じだ。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    前情報ゼロで観始めたらホラー映画並みの怖さだった。闘病ものは数あれど、病に抗って生きようとする姿を描くことがメインである場合がほとんどだ。でも本作では若い女性が原因不明の症状に襲われ、病名も治療法もわからないまま、自分の体と心とその人生がじわじわと失われていく様を、時間をかけてじっくりと丁寧に撮っていく。彼女の困惑、不安、恐怖、衰弱を、文字通り共に味わっていくことになる。運命に翻弄されるクロエの繊細な熱演とそれに寄り添う演出が好ましい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    クロエ・グレース・モレッツ扮するヒロインが幾度となく繰り返す奇矯な行動や激しい発作はさながら悪霊に取り憑かれたようでホラー映画のタッチだ。「抗NMDA受容体脳炎」という奇病は『エクソシスト』のモデルとなった少年の病だと知れば納得できる。実話の映画化だというが、映画の大半は21歳ヒロインのジャーナリストへの野心、献身的な恋人、離婚している両親などメロドラマ的展開に終始しているが、この奇病の医学的、社会的な背景をもう少し知りたいところだ。

1 - 3件表示/全3件