ジオストームの映画専門家レビュー一覧
-
翻訳家
篠儀直子
ジョン・ウーってこんなだったかと戸惑うくらい、カットつなぎが落ち着かないわ、アフレコや音響がいびつだわ(特に序盤)で、なかなか映画に入っていけなくて困るのだが、そもそも下敷きになっている「君よ憤怒の河を渉れ」自体、ウェルメイドな正統派娯楽映画というよりも、いま観ると豪快さが魅力なのだから、その作品に対する愛と敬意の表現として、このやり方は正解なのだろう。チャン・ハンユーが舟から橋に飛びつく瞬間と、福山が日本刀を抜くまでの一連のアクションに感動。
-
映画監督
内藤誠
ジョン・ウーの日本映画への造詣と西村寿行の原作にあるアクの強さが出ていて、中国と日本のスタッフ・キャストが協力して作っただけの価値はある。チャン・ハンユーと福山雅治のコンビは、監督が得意とするハトの群れが舞うなかの派手なアクションなどをしっかり演じている。倉田保昭から斎藤工まで脇にも配慮した演出もさすが。女の殺し屋たちがサイドスートリーとして効果をあげているのだが、しつこく主人公たちをつけ狙う、太った体でコミックな女優が監督の愛娘で、一家総出だ。
-
ライター
平田裕介
車が激突して大破した鳩小屋から白い鳩が一斉に飛び立つなんてのを筆頭に、どこを切っても“あの頃”のジョン・ウー節が炸裂している。30年前と変わらぬタッチや筋運びを繰り出してくれるのはファンにとっては嬉しい限りだが、現在の感覚からするとハチャメチャな映画にしか思えなくなるのではという気も。オリジナル版もなかなかの破天荒さを誇っているので、監督にウーというのは間違ってはいない。彼の愛娘アンジェルスが凄腕の殺し屋を演じているが、体型に説得力がない。
-
翻訳家
篠儀直子
まるで期待せずに観はじめたが、ディザスター・ムービー要素だけでなく、「ゼロ・グラビティ」以来(?)流行りの宇宙サバイバルと、誰が味方かわからぬスリルがあり、面白いカーアクションもあってバカみたいに盛り上がる。スペクタクルに負けないくらい人物も魅力的。異常気象ものというだけでもう反トランプの立場なのは明らかだが、大詰めのとある会話をオバマとトランプの対決みたいだと思いつつ観ていたら、やがてメキシコ人宇宙飛行士が美味しいところを持っていくのだった!
-
映画監督
内藤誠
気象変動による地球各地の崩壊が見せ場で、東京銀座に巨大な雹が降り注ぐところは思わず笑ってしまうが、香港の地底マグマの噴出やムンバイの竜巻、各地の大洪水、氷結化など、スペクタクル・シーンはさすが。一気に異変が襲ってくるのも、デヴリン監督らしい。地球温暖化とアメリカのパリ協定不参加の現在、タイムリーな企画。原爆開発のマンハッタン計画という歴史を持つ国の映画だけにこれだけの大惨事を前に、科学者と政治家がせめぎ合って事態をこじらせる物語がリアルに見える。
-
ライター
平田裕介
一時期は“破壊屋”ローランド・エメリッヒの右腕的プロデューサーだったディーン・デヴリン。そんな彼の監督作だけに手当たり次第に地球を壊すかと思いきや、意外にも宇宙ステーション内がメインの小気味よいサスペンスに仕上がっていて、災害描写を物語各所のフック程度に投入しているのが○。とはいえ、黒幕はのっけからフラグを立たせまくりで陰謀の背景もありがちにも程がある。科学者=J・バトラー、大統領=A・ガルシアというイメージ完全無視の配役もここまでくると爽快。