青春夜話 Amazing Placeの映画専門家レビュー一覧
青春夜話 Amazing Place
文化批評家・切通理作が初めて映画監督を手がけたドラマ。ひょんなことで出会った深琴と喬は、同じ高校の卒業生であることがわかり意気投合。二人は通っていた校舎でやり残した青春に復讐しようとする。一方、裏門には当直の女教師を待ち受ける影があり……。ツァイ・ミンリャン監督の「青春神話」に着想を得てタイトルがつけられた。「ら」などに出演するほか自主制作サークル3510屋を率いる深琴、「ぼくらの亡命」の須森隆文らが出演。
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評論家
上野昻志
最近の青春映画には冷淡な当方も、久し振りに青春という言葉に背中を突かれた気がする。というのも、青春期と呼ばれる頃にも、その青臭い春が鬱陶しくてならなかったからだ。青春を愛でるのは、哀惜に似た希望、希望に似た哀惜に過ぎないと。それ故、そんなものにサッサとおさらばして、物々しく歳をとってしまうことに努めてきたという次第。それが文字通りの老年になったいま、この映画を見ると、かつて足蹴にしてきたものに不意を撃たれた感じがする。とても可愛い映画だ!
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映画評論家
上島春彦
驚いた、これには。試写では驚きついでに出ていく淑女も数名いたモノホンのピンク映画。ストレス疲れの会社員二名による制服コスプレで、似合わないところがキモということになる。浦島太郎が玉手箱を開けなきゃどうなるという発想が基底にあり、当然老けずに若返るわけね。監督こだわりの宮崎駿作品への言及もあり、爆笑間違いなし。こう上手に使われたらトトロも本望であろう。二組のカップルが深夜の高校で過ごす桃色のひととき、それが交差しそうで交差しないおかしさは絶品。
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映画評論家
吉田伊知郎
評論家が映画を撮るという自意識など全く感じさせないフェティシズムにあふれた切通監督の妄想解放空間になっている。『浦島太郎』を下敷きに青春のやり直しを一夜に凝縮させた脚本は、出逢いと一線を飛び越える瞬間を丁寧に描き出すのも含めて、〈キラキラ青春映画〉へのアンチテーゼであると同時に、あんな青春を送れなかったおじさんからの少し変態の入った回答(須森隆文の異形ぶりが素晴らしい)。初々しい作りに驚くが、どうやら青春を取り戻したのは切通監督だったようだ。
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