ダウンサイズの映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
「もしもあらゆる人間を身長13㎝にダウンサイズする技術が発明されたとしたら?」。この荒唐無稽なアイデアを至ってマジメに追求することで一本の映画に仕上げてしまった作品。ダウンサイズによって革命的に解決される人類の諸問題と、人々の人生と生活のポジティヴな変化。だがこの映画はそこから一歩も二歩も先に進んでみせる。終わってみれば、これは「幸福とは何か?」をめぐるエコロジーと倫理学のレッスンなのだった。マット・デイモンを顎で使うホン・チャウがとても可愛い。
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映画系文筆業
奈々村久生
序盤こそ人間をミニチュア化するビジュアル的な楽しみもあるが(縮小直後の主人公の背景に映る、よくできているんだけど微妙に違和感を感じるドールハウスのような美術は秀逸)それがデフォルトになってしまってからは、あまりその設定が生かされていないように思う。片足のベトナム難民を演じて注目を浴びている女優ホン・チャウとデイモンの、身体性をクローズアップした官能描写はなかなかチャレンジング。いつの間にか還暦を過ぎていたヴァルツの枯れ具合にもびっくり。
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TVプロデューサー
山口剛
ダウンサイズというと「ミクロの決死圏」や「親指トム」のような冒険譚やコメディを誰しも期待するだろうが、その期待は見事に裏切られる。しかし感動を伴う心地よい裏切りだ。ユートピアをめざした縮小社会にも貧困や格差はある。興を削ぐので詳述は避けるが、人類の未来を描く壮大な物語へと想像もしない展開を見せる。朴訥とした正義漢マット・デイモンはいつものはまり役だが、処罰として縮小されたヴェトナムの反体制運動家の女性を演じるホン・チャウの名演は印象深い。
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