ゆれる人魚の映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
キッチュでグロテスクでキュートでコケティッシュ。よくある「人魚もの」のバリエーションかと思いきや、新人アグニェシュカ・スモチンスカ監督は舞台を80年代の共産主義政権下のポーランド、ワルシャワに設定することで、カルトムービー化することを運命づけられたかのようなヘンな映画を造り上げた。東欧映画独特の生真面目なユーモア感覚と、ララランディックなミュージカル演出、トンデモホラー的展開のアンバランスも面白い。でも最大の魅力は主演の二人の女の子ですよねこれは。
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映画系文筆業
奈々村久生
良くも悪くもハンドメイド感の漂うキッチュさが魅力。ポーランド産ということで、東欧のアヴァンギャルドな伝統も感じられる。それにともなうディテールの雑さが吉と出るか否か。人魚の造型もかなりアバウトで、魚類なのか爬虫類なのか獣なのか描写が迷走状態だが、そのカオスゆえの中毒性もはらんでいる。美しくエロティックな少女の上半身に比べてグロテスクな魚の下半身と、初恋を捧げるバンドマンが多分に漏れずどうしようもないスカスカのクズ男なのが何とも切ない。
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TVプロデューサー
山口剛
異形のもの、吸血鬼、美少女の姉妹、カニバリズム、映画の歴史を彩り、観客の心を捕らえてきた異端のテーマがつぎ込まれたシュールなファンタジーである。そしてミュージカルでもある。上半身が美少女で、下半身が巨大でリアルな魚であるヒロインの強烈にして異様なエロティシズムはなんとも言い難い。人魚が人間に恋した時からドラマは血なまぐさいホラーへと展開するが、画面に漂うのはポーランド映画ならではの暗いリリシズムだ。ポランスキーとわが大林宣彦の妹分に拍手!
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