野球部員、演劇の舞台に立つ!の映画専門家レビュー一覧
野球部員、演劇の舞台に立つ!
福岡県八女市を舞台に価値観の異なる高校生たちの成長を綴る、実話を基にした青春ドラマ。県大会予選一回戦でエラーし敗退した野球部に、演劇部は部員レンタルを依頼。エラーした当人ら3人が助っ人に送り出され、互いに反発しながらも芝居を作りあげていく。監督は「あつい壁」の中山節夫。野球経験のある、「人狼ゲーム プリズン・ブレイク」の渡辺佑太朗らが出演。
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評論家
上野昻志
まず、投手のジュン(渡辺佑太朗)をはじめとする野球部員4人が、いかにも強豪校のエース格の野球部員らしく描かれているのが良い。つまり、学内でも特別視され、野球を口実にたいがいのことは許されるぐらいに自惚れている連中だ。それが、女子中心の、彼らからすれば軟弱な演劇部に加わって舞台に立つなんて、とんでもない、と思いながら、イヤイヤ演劇に加わる。そこに生まれる葛藤を丁寧に描くことで、彼らが人間として成長していく様子に説得力があり、清々しい青春映画になった。
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映画評論家
上島春彦
ご当地映画には時々傑作が現れるからうれしい。タイトルまんまの中身。こういう取り組みをずっとやっている高校がモデルだが、高野連がらみで実名を謳えなかったとか。我の強い投手が芝居の世界を経験することで協調精神を養う話、と書いてしまうと反発する人もいるだろう。「建前だろそんなの」なんて。でも部員相互のコミュニケーションがとても上手くいき、もちろん想定される挫折やきしみも取り込んで発表会を迎える作りに無駄がない。これを見ると野球より舞台をやりたくなるね。
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映画評論家
吉田伊知郎
凡百のご当地映画とは一線も二線も画すのは、81歳のベテラン中山節夫の的確な演出に尽きる。年配の監督が描く若者が往々にして非現実的になりがちと危惧するまでもなく風俗描写を排除し、普遍的な野球と演劇に打ち込む若者に寄り添って描くことで瑞々しさすら感じさせる。仄かな恋情を通わせる場面のさり気なさも含め、キラキラ青春映画に直球で投げ返した感。教師からの参加強要や演劇部顧問が女子の前で男子に上半身裸になるよう強制するといった今日的問題への無関心は疑問。
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