デトロイトの映画専門家レビュー一覧
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
ビグロー監督の過去作品と同様に、今作もさまざまな論議を呼ぶのだろうが、この題材を今、これほどの強度で映画に出来るのは、彼女以外にはいないだろう。徹底してドキュメント・タッチのカメラワークといい、役者陣の異様な緊迫感に満ちた演技といい、観客を「その時、その場」に立ち会わせるためならば何でもするとでも言いたげな迫力が、作品全体に漲っている。ある意味で主役と言っていいレイシストの警官を演じたウィル・ポールターが、極めて難しい役柄を見事にやってのけている。
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映画系文筆業
奈々村久生
映像としてはほぼ初めて見る事件の光景なのに、妙に既視感があるのは、描かれているのがいじめとほぼ同じ構図だからだろうか。白人警官を演じたウィル・ポールターがクセのある顔つきだけにインパクトは半端じゃない。ただ、彼らが悪者という描き方とはちょっと違う。やっていることは卑劣極まりながら、彼らに罪の意識はなく、行動だけが刻々と記録され、手持ちカメラによる臨場感との温度差が歪な社会認識を炙り出す。いつ自分が加害者の側になるかわからないというのが一番怖い。
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TVプロデューサー
山口剛
政治的テーマの問題作を撮り続けているキャスリン・ビグローの最新にして最高の作品だ。背景は1967年のデトロイトの黒人暴動。愛国者を自負する白人警官の差別的言動が引き起こした悲劇的な事件を、モーテルの一室という空間に絞り込み、一幕の密室劇のような緊迫したドキュメンタリータッチのドラマに仕立て上げている。半世紀前の出来事だが、世界は旧態依然、各地で差別主義やレイシズムが大衆の支持を受けつつある今日こそ、この映画の持つ意味は限りなく大きい。必見!
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