わたしたちの家の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
主役は“家”。そういう意味では大林宣彦監督「HOUSE」のシリアス版とも言えるかも。町の通りにある入り口は平凡、けれども間取りにクセのある家。その家で全く別の2組の女たちの日常が進行していくのだが、時間のズレなど一切無関係に描かれる2組の女たちの日常は、“家”が同じだけにどこか浮遊感が漂い、清原監督と脚本・加藤法子の発想に感心する。そこで寝て食事をしても、あくまでも仮の宿のような“家”。さりげない喪失感も悩ましい異色のホラー・サスペンス。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
人工知能がつくった映画のようだ。良いとは思えない。観る快楽を感じさせる前進移動がいくつもあったが、そのことだけで一本の映画としてよかったと言いづらい。お話、出来事、ひとが、映画が始まってから終わるまでの時間と、それぞれの画面のなかにかろうじて在るだけで、満たしていないし足りていない。私は堀禎一「夏の娘たち~ひめごと~」も小林勇貴「全員死刑」も理由はそれぞれながらあまり買えないが、批評の援護を見るにつけ自分の観る目のなさを若干疑う。本作も同様。
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映画評論家
松崎健夫
いつの間にか、わたしたちの頭の中には映像で描かれる空間に対する認識方法が備わっていることに気付く。そして、特定の空間における時間の流れは、基本的にタイムライン上で一直線だと理解している。映画の歴史は、その法則のようなものをあえて崩したり捩じ曲げたりしながら、これまでにない物語の流れを構築してきた。本作では二つの時間がひとつの家屋の中で流れている。清原惟監督は「ひとつのバガテル」でも特異な空間設計に秀でていたが、今回は物語をも特異にさせている。
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