妻よ薔薇のように 家族はつらいよIIIの映画専門家レビュー一覧
妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII
山田洋次監督による喜劇「家族はつらいよ」シリーズ第3弾。三世代で賑やかに暮らす平田家の家事を担う主婦・史枝。ある日、コツコツ貯めていたへそくりを泥棒に盗まれたことをきっかけに、夫への不満が爆発。我慢も限界に達した彼女は家を飛び出してしまう。橋爪功、吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優といったおなじみの平田家の面々のほか、シリーズ常連の小林稔侍、風吹ジュン、落語家の立川志らくが出演。脚本・平松恵美子、音楽・久石譲、撮影・近森眞史、美術・倉田智子ら、シリーズを支えるスタッフも集結。
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映画評論家
北川れい子
専業主婦が消えてしまった三世代同居の家の中は、家事全般が滞り、日常がメチャクチャ。おまけにアワヤ火事のボヤ騒ぎまで。山田監督はそんな家族の混乱状態を描いて笑いをとる。まるで家事ロボットが故障して不便で困った的な扱いで、すごく違和感を覚える。彼女も大事な家族なのに。このシリーズが取り上げるテーマは、1作目の熟年離婚も、続く無縁社会もすでに社会現象化したテーマではあったが、今回はいくらなんでも大時代的。俳優陣のアンサンブル演技は面白いのだが。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
山田洋次イズバック!女性の労働問題映画!そして夏川結衣ライズアゲイン!「東京物語」に由来しながらその拒否反応のように重ねられた「家族はつらいよ」シリーズでようやく固有の見応えを感じさせた。ずっと夏川結衣を石井隆監督作「夜がまた来る」の“名美”だとも思ってきたからこのシリーズの彼女を観ることはつらかったよ。だが報われた。あの“名美”の情念はどこにいった?それへの妻夫木くんの回答は、労働と意識もされない家事労働に埋没した、と。しかし薔薇は咲いた。
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映画評論家
松崎健夫
今作では様々な“選択”が描かれている。仕事、老後、趣味、さらには、墓地の場所やお金の使い道、味方につくべきは父親の側か母親の側か、はたまた鰻は並か特上かという細部に至る“選択”が描かれているのだ。本作のタイトルデザインを担当しているのは横尾忠則。彼の代表作〈Y字路〉を想起させる冒頭の三叉路は“選択”を暗示させる〈わかれ路〉のように見える。そして〈Y字路〉が横尾の故郷の風景から着想を得たことと、家族の暮らす家が三叉路にあることの意味を見出すのだ。
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