ピンカートンに会いにいくの映画専門家レビュー一覧
ピンカートンに会いにいく
「エキストランド」の坂下雄一郎が監督・脚本を務めたヒューマン・コメディ。20年前に解散したアイドルグループ・ピンカートンの優子は今も売れない女優をしている。レコード会社の松本からグループ再結成の誘いを受け、元メンバーたちに会いに行くが……。出演は、「下衆の愛」の内田慈、「愚行録」の松本若菜、「島々清しゃ」の山田真歩、「東京ウィンドオーケストラ」の水野小論、「恋人たち」の岩野未知、「恋とさよならとハワイ」の田村健太郎。
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映画評論家
北川れい子
そういえば坂下監督の劇場映画デビュー作「東京ウィンドオーケストラ」も、音楽がらみのドジ&ふて腐れコメディとしていい線いっていたが、今回はアイドル崩れのアラフォー女子連の、飛んで火に入る夏の虫、が、玉砕転じて……。不発に終わったアイドル・グループの名がアメリカのミステリーに登場する“ピンカートン”というのも人を喰っているが、元リーダー格の内田慈をメーンにしたグループ再結成の曲折は、キャラ、台詞、エピソード共に苦笑いの雨アラレ。坂下監督、絶好調!!
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
昨今隆盛のアイドル文化に便乗した軽いものかと見くびっていたが、漫画『カラテ地獄変』などでいうところの“人の性(さが)悪なり”という認識から見る世界があって面白かった。ファンは痴愚のごとく、祀られた少女を崇拝し、当の偶像少女らは彼らを侮蔑し互いに嫉妬し引きずりおろしあい世に毒づく。そのなかで毛筋ひとつほどあった友情を壊した。内田慈の元メンバー探訪という枠組みが良い。もっと淪落の地獄のなかでもうひとりの自分を探す旅でもよかったが。女優が皆良い。
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映画評論家
松崎健夫
“ピンカートン”に会いにいくのは、彼女たちのファンだった人々だけではない。これは“ピンカートン”=“昔の自分”に会いにいくという物語でもあるからだ。つまり“ピンカートン”は昔の仲間を探す“探偵”=“今の自分”のことでもある。かつての栄光や思い出に縋りながら生きているのは、何も元アイドルだった者に限らない。その「誰にでもある」普遍性を、少し変わった題材の中で描くことに坂下監督は長けている。特筆すべきは加湿器をメタファーにした再会場面の秀逸な会話。
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