モリーズ・ゲームの映画専門家レビュー一覧
モリーズ・ゲーム
「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー脚色賞を受賞したアーロン・ソーキンの初監督作。トップアスリートから一転、世界一掛け金が高いポーカー・ゲームの経営者となり、遂にはFBIに狙われることになった実在の女性モリー・ブルームの栄光と転落を映し出す。出演は「女神の見えざる手」のジェシカ・チャステイン、「ダークタワー」のイドリス・エルバ、「ドリーム」のケヴィン・コスナー、「JUNO/ジュノ」のマイケル・セラ。撮影監督を「ガール・オン・ザ・トレイン」のシャルロッテ・ブルース・クリステンセン、音楽を「スティーブ・ジョブズ」のダニエル・ペンバートンが担当。原作は2014年に刊行されベストセラーとなったモリー・ブルームの回顧録。
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批評家、映像作家
金子遊
女子スキーのモーグルで挫折した元選手がロースクールに入学、ひょんなことから始めた雑用のバイト。そこから、ポーカー・ゲームの主催者へと華麗なる転身をはかる。アメリカ人好みの実話もの。人生は偶然に導かれて流転し、年をとればその偶然が必然だったと振り返る。父娘の心理的葛藤なる悪しきフロイト主義に食傷気味になるが、モリーが下した「人生最大の決断」に、金や地位ではブレない女性の芯の強さを見る。もう少しポーカーの駆け引きがわかる演出にできなかったか。
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映画評論家
きさらぎ尚
モリーの常人離れした才覚は実話でないような実話として、物語の満足度が倍に。トップアスリートから賭博場の経営者に転身するまでは普通の伝記と映っていたが、女性オーナーとして成りあがり、さらに逮捕から裁判と進展するにしたがい、セリフの応酬でドラマはにわかに引き締まり、隙を見せずスピード感も増す。J・チャステインはやり手キャラがすっかり板につき、初監督のA・ソーキンは危なげない一歩。両者共今後に期待がもてる。ポーカーの知識があればもっと楽しめたのに。
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映画系文筆業
奈々村久生
アーロン・ソーキン一流の膨大かつウィットに富んだセリフの応酬が小気味よい。脚本家出身らしく言葉のテンポが編集を含め映画全体を支配している。チャステインの演じるモリーは彼女自身が「女神の見えざる手」で作り上げた、男性社会の中で頭角を現すヒロインの系譜に連なる演技とキャラクターで、安定感は抜群。弁護士役のイドリス・エルバとの掛け合いは見ものだ。優しい結末は「ソーシャル・ネットワーク」で組んだデイヴィッド・フィンチャーとの違いが浮き彫りに。
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