聖なるものの映画専門家レビュー一覧

聖なるもの

長編デビュー作「花に嵐」がPFFアワード準グランプリを受賞するなど注目を集める岩切一空の第2作。大学の映画研究会に所属する岩切は、4年に一度現れる“怪談の少女”の話を耳にする。その少女を主演に撮った映画は、必ず傑作になるというのだが……。出演は「雨粒の小さな歴史」の南実櫻、「イノセント15」の小川紗良。
  • 評論家

    上野昻志

    監督の岩切一空は、画面に映った顔、姿形が面白いから、本作の男優賞にとどまらず、役者としても生きていけそう。謎の美少女・南美櫻は、いかにもそれらしい表情そのままなのがわかりやすく、それだけに稀薄。対して、小川紗良は、物語の中にいながら、常に外の空気を感じさせて映画の枠を拡げている。監督は、彼女のそんなところに自身の映画作りに対する批評をこめたと思うが、それは、本来、着地点ではなく出発点なのではないか。最後の自主映画に潔く見切りをつけ、次を目指すべし。

  • 映画評論家

    上島春彦

    出てくる女がいい。他はダメ。定型を分かっていない人が定型を外したって仕方がないでしょ。意味不明になるだけだ。真っ先に現れる先輩が鍵だとは分かるが、最後までちゃんと描いてほしい。色々オマージュなんだよね、とは理解したがそれがどうした、という感じもある。ただ画面が口当たり良く、主観映像のグラフィック・センスも優良。場面場面だけで楽しむように作られておりネット動画とかで流すのに向いている。そういうタイプの映画というのはジャンルとしても存在するから。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    前作「花に嵐」の素晴らしさに感嘆した者としては、そこらの若手とは格が違う才気煥発な岩切に瞠目しつつ、前作との同工異曲ぶりに幅の狭さを感じる。商業性を意識した前作と、作家性を押し出した本作では好みが別れるだろう。ボンジュール鈴木の楽曲の絶妙な配置、小川紗良をはじめ女優たちを魅力的に撮ることにかけては天才的。しかし、肝心のラストは迷いに迷って、思いついたアイデアすべてを団子の串刺し状に並べているようにしか見えず、いずれも優れた発想だけに勿体ない。

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