アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダルの映画専門家レビュー一覧

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

二度オリンピックに出場しながら事件の中心人物となりスケート界から追放された元フィギュア選手トーニャ・ハーディングの半生を綴る伝記ドラマ。大技を成功させ栄光を掴むトーニャ。しかしライバル選手襲撃事件への元夫の関与が判明し、彼女は転落していく。主演は「スーサイド・スクワッド」のマーゴット・ロビー。トーニャ本人の口調や立ち居振る舞いを再現、スケートにも挑戦し、波乱に満ちた生き様を演じる。また、彼女を厳しく育てた母ラヴォナを「ヘルプ ~心がつなぐストーリー~」のアリソン・ジャネイが演じ、第75回ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門助演女優賞を獲得。第90回アカデミー賞主演女優賞、助演女優賞、編集賞にノミネート。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    怪物としか言いようのない実母が元凶なのは当然として、それ以上に階級差別と性差別に押しつぶされていくトーニャの悲劇には、同時代に活躍した伊藤みどりと彼女とを分けたものは何だったのかと考えざるをえないのだが、あのバカすぎる事件に至る経緯のまぬけぶりには、やはり笑ってしまうのだった。ドラマ部分と俳優が演じているインタビュー部分とが相互干渉するのが面白く、フィギュアスケートという競技のダイナミズムを映画はこのように表現できるのかという発見と感動もあり。

  • 映画監督

    内藤誠

    クーベルタン男爵の理想とは離れて、オリンピックをめぐるイヤな噂が耳に入る昨今だが、94年のナンシー・ケリガン襲撃事件の映画化である。キワモノというよりは、脚本の真実追求の姿勢がよく、製作を兼ねてトーニャ・ハーディングを演じるマーゴット・ロビーの体当たり演技もリッパ。娘のスケートの才能で貧しい生活から脱却しようとする母親アリソン・ジャネイのクールな顔が悪夢だ。襲撃犯とされる男性たちもリアルで、観客はつい、ナンシーよりもト―ニャに肩入れしてしまう。

  • ライター

    平田裕介

    劇中で人物が事件を「バカしか出てこない物語」と評するが、まさにその通り。しかし、その背景には貧困や毒親があり、それらが延々と“負”を連鎖させ、肥大化させていくという悲しき常理しっかり浮き上がらせている。とはいえ決してメソメソとしたノリではなく「グッド・フェローズ」的テンションな語り口なので、下衆な視点でハーディングたちの右往左往を観てしまうのだが。彼女が実際に演目で使ったZZトップ『スリーピング・バッグ』をはじめ、流れる楽曲は最高。

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