未来のミライの映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
生まれたばかりの赤ん坊に注がれる両親の愛情に、自分が取り残されたように感じる甘えん坊の男の子と、物語の起点になるのは、小さな話だが、それが次第に大きくなり、ついには、一人で世界に向き合うなかで、自分が何者なのかという問いにぶつかる展開は、アニメーションならではの自在なイメージ展開と合わせて魅せる。とくに最後の、東京駅を思わせる巨大な駅に迷い込み、忘れ物係から問われても、両親の名も自分の名前も言えずに列車に引き込まれそうになるくだりはワクワクした。
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映画評論家
上島春彦
現代建築が好き。本作の舞台がまさにそれ。この建築家自邸のコンセプトは自然を家の内にしつらえ、コンクリート扉で外を完全にシャットアウトすること。有名な「住吉の長屋」がヒントか。冒頭に昔の家の様子を超俯瞰で示すことから分かるように、戦後初期から平成を経て未来の日本までを建物の外観やそこに住む人の使い方から幻視する構成になっている。突然お兄ちゃんになって親からかまってもらえなくなった子どもの自己確立を、彼の視点というか地点から描く意図がそれで生きる。
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映画評論家
吉田伊知郎
4歳児の生き生きとした姿が活写されており、庭を挟んで上下階に配置されたリビングとこども部屋を結ぶ空間が幼児の躍動を描くのに活用されている。「トトロ」の糸井重里みたいな星野源の不器用な父ぶりをはじめ、ファンタジーに頼らなくとも、この家と家族の物語だけで成立したのでは? 派手に盛られた異世界と繋がる庭も、実は脇役に過ぎなかった未来から来る妹も、東京駅の見事な空間造形も、脚本が壊滅的では要領を得ない。次回作は奥寺佐渡子との再タッグを切に望みたい。
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