ベルリン・シンドロームの映画専門家レビュー一覧

ベルリン・シンドローム

第33回サンダンス映画祭ワールド・シネマ(ドラマ)部門に正式出品されたサスペンス。オーストラリア人の女性カメラマン、クレアは、ベルリンを旅行中にアンディと名乗る男と出会い、彼の部屋に泊まる。しかし、その日からクレアは部屋に監禁されてしまう。出演は、「ハクソー・リッジ」のテリーサ・パーマー、「THE WAVE ウェイヴ」のマックス・リーメルト。監督は、「さよなら、アドルフ」のケイト・ショートランド。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    典型的な監禁もので、もっと設定も展開もヒネりにヒネりまくった作品を随分観てきてしまった身としては、かえって新鮮に感じるかと思いきや、やはり「なぜ今この題材?」という疑問は禁じ得なかった。だがオリジナリティはない分、ディテールにこだわってじっくりと撮っているのは好感が持てる。主演のテリーサ・パーマーは頑張っているのだが、肝心の男の演技にいまいち狂気が感じられない。あとエロチックな場面が多いのだけど、なんだかサービスショットぽくてちょっとうんざり。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    旅先で感じたロマンスの予感が一転悪夢へ……という展開は生々しい。ただしそれがゴロツキや犯罪集団などによるものではないというところがミソだ。どちらかというと冴えない、顔つきもあまり印象に残りそうにない男の単独監禁はいかにも素人らしいツメの甘さが目立つも、条件さえ揃えば成立してしまう怖さを証明している。目立たない人が、さしたる目的も計画性もないまま、なんとなく犯行に及んでしまうという曖昧さ。それは真実なのかもしれないがしかしもう少し考察が欲しい。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    誘拐監禁された女性の脱出サスペンス劇だが、スリラーというよりは男女の異常な関係、異常な性愛が描かれる。この種のドラマは、サド侯爵の昔から、女性はあくまで欲望の対象で、男性目線で男性の欲望を描くものになりがちだが、今回は原作も監督も女性なのでどのような視点で描かれるか興味があった。テリーサ・パーマーは、密室の二人の間の愛憎、暴力、被虐的セックス、心理的な苦痛、孤独など困難な題材に挑み健闘している。文学教師のアンディの日常生活の設定も面白い。

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