猫は抱くものの映画専門家レビュー一覧

猫は抱くもの

大山淳子の同名小説を、沢尻エリカと吉沢亮共演で犬童一心が映画化。スーパーで働く元アイドルのアラサー女性、沙織は、日々の出来事をロシアンブルーの猫・良男に打ち明けていた。やがて良男は、自分が人間で、沙織の恋人だと思い込むようになり……。「素敵なダイナマイトスキャンダル」の峯田和伸、『わにとかげぎす』のコムアイが共演。
  • 映画評論家

    北川れい子

    人間と擬人化した猫の話といえば、アニメ化された大島弓子原作の「綿の国星」があるが、今回は似た設定を実写化、これがどうにも歯が浮くような作品で、途中で逃げ出したくなった。擬人化した猫たちが集まって、自分たちを振り回す人間たちにあれこれ言うくだりなど、舞台劇ならまだしも、文化祭のイベントが紛れ込んだよう。落ち目のヒロイン役の沢尻エリカもプラスチック人形並みにツルンとしていて、その猫撫で声もシラジラしい。脚本、演出の変化球がスッポ抜けしたような作品だ。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    これからの日本は戦後すぐの社会における復員兵やアメリカの退役軍人のような元アイドルという存在を世の中に大量に抱え込むだろう。自意識の戦場のヴェテランのPTSDは坂下雄一郎監督「ピンカートンに会いにいく」でも描かれた題材。本作は大九明子監督「勝手にふるえてろ」に匹敵、あるいは様々な仕掛けという意味ではそれを凌駕する面白い語り口の女性映画だがスタイルの突出がやや切実さを減じている気がする。水曜日のカンパネラコムアイが素晴しい。もっと映画出るべし。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    「心中天網島」や「ドッグヴィル」など“舞台的なもの”を映画に変換してきたという歴史は確かに古今東西ある。そして終幕に至るストーリーの?末を考察すれば、なぜこのような構成にしたのかも理解できる。だが、劇中番組やアニメ表現などによっても織りなされる実験性が、2010年代の映画として適ったものであるかは議論すべき点だと思える。沢尻エリカはかつてERIKA名義やAmane Kaoru名義でCDを出していたが、その確かな歌唱力を何気ない場面で確認できる。

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