ラッキー(2017)の映画専門家レビュー一覧
ラッキー(2017)
「パリ、テキサス」のハリー・ディーン・スタントン最後の出演映画。90歳のラッキーはいつもと変わらぬ日常のなかでふと、人生の終わりが近づいていることを思い知らされ、死について考え始める。小さな街の人々と交流しながら、彼は“それ”を悟っていく。監督は、「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」出演のジョン・キャロル・リンチ。出演は、「インランド・エンパイア」監督のデヴィッド・リンチ、ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』のロン・リビングストン、「人生万歳!」のエド・ベグリー・ジュニア、「王様のためのホログラム」のトム・スケリット、「アーティスト」のべス・グラント、「ナバロンの要塞」のジェイムズ・ダレン、「パターソン」のバリー・シャバカ・ヘンリー。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
ハリー・ディーン・スタントンのことをまったく知らずにこの映画を観たとしたら、と想像してみて、それでも感動的な映画だと思えたから、良く出来てるのだと思う。とはいえもちろん、こちらは老名優の最期の姿をそこに見ているわけで、実際のスタントンがラッキーみたいな人物だったかどうかは関係なく、その一挙手一投足、その表情のひとつひとつにさまざまな感慨が走る。90歳の彼の顔はとても綺麗だ。哲学的な映画だが、むつかしいことは言っていない。リンチの演技も素晴らしい。
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映画系文筆業
奈々村久生
いつもの家、いつもの道、いつもの店。一人で起き、馴染みの人たちと会い、また一人で眠る。静かに、しかし平和に過ぎていくミニマムな一日を黙々と生きるスタントンのストイックな立ち居振る舞いから目が離せない。その日々の先に自らの死を意識する瞬間が訪れる、というのはある意味でとても幸せなことかもしれない。スタントンの晩年の勇姿とデイヴィッド・リンチの味わい深い演技を引き出し、初監督作とは思えない洗練された監督術を見せたジョン・キャロル・リンチの、同胞である俳優に向けた眼差しが優しい。
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TVプロデューサー
山口剛
先頃亡くなったハリー・ディーン・スタントンが、ほとんど自分自身のような九十歳の独居老人を演じている最後の主演映画である。判で押したような毎日の生活がユーモラスに描かれる。事件らしい事件は何も起きないが、彼の人生や人となりが浮かび上がる。脇役のデイヴィッド・リンチが面白い。酒場で戦友に会うシーンは「秋刀魚の味」の軍艦マーチのシーンを思い出す。そういえば笠智衆を思わせる佇まいだ。数ある出演作、特に晩年の作品が脳中に去来し不思議な感銘を受ける。
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