いつだってやめられる 10人の怒れる教授たちの映画専門家レビュー一覧

いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち

2009年の欧州危機を踏まえ、学問の道を絶たれた研究者たちが日常の鬱屈を吹き飛ばすイタリア発の風刺コメディ。合法ドラッグ製造で逮捕された神経生物学者のズィンニは、警察からスマートドラッグ蔓延防止のミッションを依頼され、仲間と共に再起を図る。出演は「おとなの事情」のエドアルド・レオ、「人間の値打ち」のルイジ・ロ・カーショ。
  • ライター

    石村加奈

    三部作の二作目なので、ストーリーについては冷静に言及できないが、耳に楽しい映画だ。イタリア語独特の、巻き舌気味なセリフ回しのテンポと『TAKE BACK THE POWER』や『UNDER DOG』など、パンチの効いた挿入曲との相性がすこぶるいい(音楽はミケーレ・ブラガ)。音のリズムに合わせて、緩急自在なカメラワークも愉快痛快。スローモーションからアニメへとスライドするアクロバチックな展開も面白い。研究員ギャングたちのアジトや車のデザインもユニーク。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    このイタリア笑劇が連作され、支持される背景にあるのは“大学教授は役に立たぬ学問にうつつを抜かして高収入を得る、鼻持ちならぬ特権階級”というルサンチマンだろう。日本でも文系学問が“趣味”だなどと揶揄され、似た状況になりつつある。本作の教授たちが追いつめられ、重い肉体を引きずって悪戦苦闘する姿を観客は眺め、いい気味だと嗤う。だからコメディというよりバラエティに近い。問題は、この騒動が社会風刺としても権力批判としても脆弱な点と、可笑しくない点だ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    専門知識は抜群だけど、いざ実行となると間が抜けている10人の教授たち。このチームが女刑事と手を組んでドラッグ壊滅作戦に。人気映画の続篇のせいか、導入部あたりは人物の設定や関係が分かりにくいのが難点。が、お賑やかなコメディーで、往年の「黄金の七人」を思い出す。ま、あれほどスマートじゃないけど。少し展開がまどろっこしいが、クライマックスが懐かしの列車活劇なのが嬉しい。ここで点数もぐんと上がって。次回作は(巻末の予告を見る限り)派手で面白そう! 期待。

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