ヒトラーを欺いた黄色い星の映画専門家レビュー一覧
ヒトラーを欺いた黄色い星
第二次世界大戦下のベルリンで、ナチスの迫害を逃れて戦後まで生き抜いたユダヤ人4人の実話を、本人たちへのインタビューや記録映像を交えて映画化。運よく収容所行きを逃れたツィオマは、ドイツ人兵士に成りすましてベルリン市内の空室を転々とするが……。出演は「ヴィクトリア」のマックス・マウフ、「あの日 あの時 愛の記憶」のアリス・ドワイヤー、「ゴーストハンターズ オバケのヒューゴと氷の魔人」ルビー・O・フィー。監督は、テレビドキュメンタリーを中心に活躍してきたクラウス・レーフレ。
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批評家、映像作家
金子遊
ドキュメンタリー監督にとって最大のジレンマは、過去のできごとを自分のカメラで撮影できないことだ。本作の監督はTVドキュメンタリー畑の人らしい。ベルリンに潜伏して生き延びたユダヤ人へのインタビュー部分と、劇映画のパートを組み合わせた大胆な構成にしている。そうすれば、過去の事象を微細なディテールにいたるまで映像で表現できるからだ。とはいえ、TVの再現ドラマを見慣れていることもあって、特に斬新な手法にも感じられなかったのは観る側が麻痺しているのか。
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映画評論家
きさらぎ尚
映画から知らなかったことを教わる場合が少なくない。ここ数年続々と公開されるナチス・ヒトラーを扱った作品からはとりわけ多くを教わる。この映画が描く、ユダヤ人が戦時下のベルリンに潜伏して生き延びた事実も、この例に。当事者が語る極限下での生存は、存在すること自体が許されなかった事実と併せ、今更ながら戦慄する。語りと、再現ドラマで構成して解りやすいが、語りだけで通した方が、むしろ生存の本質に迫れたのではないかと、後日考えた。「ゲッベルスと私」のように。
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映画系文筆業
奈々村久生
第二次大戦下のベルリン。そこで潜伏生活を送るユダヤ人の心情からとらえられた街並みの映像が美しい。暗く、閉塞的だが、どこか艶っぽく現実感を欠いた世界。そこがソ連兵に攻め込まれることは彼らにとって救いであると同時に痛みを伴う。自分たちの町でありながら憧れの場所を舞台としたスリリングなサスペンス映画におけるキーアイテムは身分証だ。潜伏中の少年がその偽造に生きるモチベーションを見出すエピソードをはじめ、命を脅かすそれが別の誰かを助けるお守りにもなるのだ。
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