名もなき野良犬の輪舞(ロンド)の映画専門家レビュー一覧

名もなき野良犬の輪舞(ロンド)

第54回大鐘賞など韓国国内で数々の映画賞を席巻したハードボイルド。野心的なジェホは、刑務所内で新入りのヒョンスと出会う。ヒョンスがジェホの窮地を救ったことをきっかけに信頼で結ばれた2人は出所後、手を組んで犯罪組織を乗っ取ろうとするが……。出演は「殺人者の記憶法」のソル・ギョング、「ワンライン/5人の詐欺師たち」のイム・シワン。監督は「マイPSパートナー」のビョン・ソンヒョン。
  • 批評家。音楽レーベルHEADZ主宰

    佐々木敦

    すごく面白い。内容はまあよくある系なのだが、映像も演技も非常にセンスがある。全体のテイストはどこか「アウトレイジ」風。主演の二人以外のキャラも立ちまくっている。しかしやはりこの映画の肝はソル・ギョングだ。「殺人者の記憶法」と本作を観るだけでも、どれだけ凄い役者かはわかる。一見しょぼくれたオジサンなのに内側から滲み出る狂気が圧倒的。ハードボイルドな女刑事のチョン・ヘジンも素晴らしい。北野風なのは緩急の付け方、緊張と脱力の自在な制御。これは買いです。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    優等生イメージの強いイム・シワンが、虐げられる一方だった「弁護人」(13)での屈辱を晴らすかのように、ダークなキャラクターとアクションで大暴れ。 悪に対する力みのなさという点ではソル・ギョングよりも悪役に向いているかもしれない。近年の韓国映像界で流行りの時制を行き来する構成にはやはり振り回されるが、スタイリッシュなアクションシーンは華麗でありながらちゃんと「痛」かっただけに、監督がSNSでの失言からカンヌ出席断念を余儀なくされた事態は残念だった。

  • TVプロデューサー

    山口剛

    ヤクザ映画やギャング映画はホモソーシャルの世界だと言われているが、この映画はその究極の典型だ。暗黒街で知り合った二匹の野良犬、犯罪組織の№2と潜入刑事。孤独な過去が二人を結ぶ絆だ。組織を取るか友情を取るかはまったく予断を許さない。ソル・ギョング、イム・シワンが適役を好演。上司の女刑事、組織の会長などの点景人物や獄中の描写も面白く、ノワール・ファンの心をつかむ設定、映像にあふれた快作。欧米の映画界からリメイクの申し込みが舞い込みそうな企画だ。

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