ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたの映画専門家レビュー一覧
ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた
「ノクターナル・アニマルズ」のジェイク・ギレンホールが製作・主演を務めた実話に基づくヒューマンドラマ。ボストンマラソン爆破テロ事件に巻き込まれ両足を失ったボーマンは、ボストン復興の象徴として脚光を浴びるが、彼の前には様々な困難が待っていた。監督は、「グランド・ジョー」のデヴィッド・ゴードン・グリーン。出演は、「黄金のアデーレ 名画の帰還」のタチアナ・マスラニー、「ヴィクトリア女王 世紀の愛」のミランダ・リチャードソン、「ショーシャンクの空に」のクランシー・ブラウン。
-
翻訳家
篠儀直子
題材から想像されるような直球の作りの映画ではない。普通だったら省いてしまうような平凡な細部をこだわってじわじわ描き、アメリカ映画ではあまり目にしない強靱なクロースアップが連打され、言葉では説明しきれない複雑な感情がスクリーン上に広がっていく。さらに、主人公と親族一同、ツレの男たちの、洗練とはほど遠い雰囲気の表現が絶妙。インテリとエスタブリッシュメントの都市ではない、別の一面のボストンが見られる。フォーカスの使い分けを含め、何を映すかの選択も巧み。
-
映画監督
内藤誠
テロ事件を素材にした映画が次々に公開されているが、ジェイク・ギレンホールがプロデュースも務めただけに、爆弾テロで両足を失った男ジェフ・ボーマンを渾身の演技で見せる。労働者の一家は結束が固く、それゆえに、ボーマンの恋人エリン(タチアナ・マスラニー)と彼の母親パティ(ミランダ・リチャードソン)の間が感情的にすれ違うところが出てくるけれども、両者の関係が実にリアル。最後はヒューマニズムで締める企画にしろ、人間のイヤな面も描き切った点はよしとしたい。
-
ライター
平田裕介
テロで両脚を失った被害者なのに英雄として担がれたら、誰だってどうにかなる。ここまでだと“さもありなん”としか思えぬ内容だが、家族、親戚、友人といった周囲が驚異的に無知蒙昧で軽薄短小なのがミソ。身近な者こそ彼の苦しみに気付いて理解すべきなのだが、激烈バカゆえに想像力皆無なのでそれができない。この絶望を徹底的に描き、恋人の賢明さや優しさ、バカの壁を乗り越える主人公の強さが浮き立つ仕掛け。英雄とは何かというより、環境の重要さについて考えさせられた。
1 -
3件表示/全3件