正しい日 間違えた日の映画専門家レビュー一覧
正しい日 間違えた日
「自由が丘で」のホン・サンス監督と「お嬢さん」のキム・ミニが初めて組んだ、一組の男女の二通りの展開を綴る異色ラブストーリー。運命的な出会いをした映画監督チュンスと女性美術家ヒジョン。タイミングの違いにより、二人の辿る道もまた変わっていく。本作以後、キム・ミニはホン・サンス監督の新たなミューズとなり、タッグを組んでいく。主演は「王の涙 -イ・サンの決断-」のチョン・ジェヨン。第68回ロカルノ国際映画祭にて最高賞にあたる金豹賞と主演男優賞を獲得。第28回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品(映画祭タイトル「今は正しくあの時は間違い」)。
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ライター
石村加奈
芸術家志望の頑な女とモラトリアムを引きずった中年映画監督という、世にも厄介な組み合わせが、デリケートな男女の、勇敢な出会いと別れという叙情的作品に! 何が正しくて、何が間違いだったのか? という観点から、観れば観るほど味わい深い。前半から後半へ、どこがどう変わったのか、観客自身がきちんと?める構成が滅法面白い。そのズレが微妙な変化であるところもチャーミングだ。例えば結末の違いを筆者は素直さと捉えたが、おぼこさが自身にはね返るようなオマケも愉し。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
擬似自伝的コント2つのうち前半は下世話な現実譚、リセットされ修正された後半は理想主義的。なんともずるいこの話法は大島?「帰ってきたヨッパライ」のごとし。タラレバ的理想主義は、本作がロケされた京畿道水原市の空気が影響を及ぼしたと推理したい。前後半とも物語の発端となる世界遺産の華城行宮は、NHKドラマでおなじみイ・サン(正祖王)が建てた宮殿であり、一度は遷都が夢見られた理想都市。辺りにはあらぬ空想を掻き立ててやまぬ冷たい霊気が滞留しているのだ。
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脚本家
北里宇一郎
映画監督が女をナンパする。一回目は失敗して二回目は上手くいく。その繰り返しの映画。監督が既婚のこと。それをいつ、どのタイミングで彼女に言ったか。そこが成否の分かれ目――という映画。ちと手法を弄びすぎという感がして。この主人公も身勝手としか思えない。はい、そんな男のイヤなところを率直に描きましたと、ホン監督は言うかもしれないが。相変わらず女心の観察眼は細かい。けど、ナルシスも匂って。「それから」の2年前の作品か。本気不倫を経て少し大人になったのね。
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