家族のはなしの映画専門家レビュー一覧
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評論家
上野昻志
これは、身も蓋もない言い方をすれば、バカ息子の帰還というお話ですな。だって、そうでしょ。田舎がイヤで東京の大学に行ったけど、勉強に興味がないから、バンドをやって、ちょっと認められたら舞い上がって、いっぱしのミュージシャン気取りになり、リンゴ作り一筋の親父をバカにするのだから。むろん、そんなバカ息子も、幼馴染みの一言でやっと、すべてを知りながら自分を受け容れてくれる親父のことを知るというように話は落ち着くのだが、彼のバカぶりに魅力がないのが致命的。
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映画評論家
上島春彦
鉄拳の原作が十分弱でせっかくいい話にまとめたものを、何でわざわざ八十分の陰険な映画にしなきゃいかんのか。星を付けられないのはそのせいだ。ただし世の中の残酷さをたっぷりと主人公の甘えん坊が味わうという作りは説得的。でも悪辣なレコード会社の担当者に土下座するアーチストを描くよりも、りんご農家の苦労やそれを乗り越える工夫の方を見たかった。少年時代の主人公の純真さが父親の心の支えであったのを途中で観客は知るだけに、そう思う。目の付け所は良かったのだが。
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映画評論家
吉田伊知郎
親への感謝は忘れないようにしましょうという大きなお世話のメッセージに辟易するが、鉄拳原作となると古色蒼然とした何の捻りもない話を見せられるのは「振り子」同様。道徳映画と見まがう説教臭い話かつ退屈な台詞の応酬に、男に奉仕する古い女性像を体現させられる財前や成海をはじめ、これだけのキャストが参加していて気の毒。主人公へのレコード会社の社員の言動も薄っぺらくて観てらんない。鉄拳の漫画が劇中に出てくるが、終盤では均衡を崩すほど長々と見せるのも閉口。
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