高崎グラフィティ。の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
高校の卒業式を終えたばかりの男女5人の青春群像劇で、ホンの1日か2日の話だが、いささか話を盛り込みすぎ。5人それぞれの不安や夢は、一人ひとり見ればそれなりにリアリティがあるが、5人同時に描かれるとヤラセ的なうさん臭さが残り、それが残念だ。彼らはそれまであまり親しくなかったという設定で、ひょんなことで共に行動をするようになるのだが、自分の不安を抱えてのいくつもの行きずり的お節介に素直さが感じられるだけに、話を絞ってほしかった。特に不倫話は余計。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
良い話ねらいで悪ぶらず陰惨の突出もないが、その抑制が逆に、気を抜けばひたすらに荒廃していく生の気配を出していることはひとつの見甲斐。その黒々とした感じにたちずさむ若者の輪郭は明瞭かつ普遍的で高崎も世界だ。奥野瑛太と川瀬陽太の下で一発イリーガル&デンジャージョブをきめてその報酬でヒロインを助けようとする萩原利久が突っ込む直前、嗚呼、半日くらいまえは楽しかったぁと回想するイメージがちゃんと過去場面の初めて見せる彼から目線のカットなのも良かった。
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映画評論家
松崎健夫
高崎市内を流れる川は利根川と合流し、やがてその支流は江戸川へと分岐してゆく。その先にあるのは〈東京〉だ。いくつのも分岐点を通過しながら大海へと向かう河川。その河原を歩く、高校を卒業したばかりの若者たち。彼らは有限の時の流れの中で、夜の川岸にて花火に興じるのだ。終盤、彼らは高台からその川を見渡すこととなる。本作には佐藤玲や萩原利久ら役者たちの“有限の時”も映像の中に刻み付けられている。そのため、川の流れが人生そのものを象徴しているように見えるのだ。
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