コーヒーが冷めないうちにの映画専門家レビュー一覧

コーヒーが冷めないうちに

本屋大賞2017ノミネートの同名小説を「ナラタージュ」の有村架純主演で映画化。時田数が働く喫茶店・フニクリフニクラには、店内のある席に座り、いくつかのルールを守ると望む時間に戻れるという都市伝説があった。今日も噂を聞いた客が喫茶店を訪れる。監督は、『アンナチュラル』などドラマの演出を手掛けてきた塚原あゆ子。出演は、「デメキン」の健太郎、「流れ星が消えないうちに」の波瑠、「チェリーボーイズ」の林遣都、「新宿スワン」シリーズの深水元基、「ピンカートンに会いにいく」の松本若菜、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の薬師丸ひろ子、「恋は雨上がりのように」の吉田羊、「アウトレイジ 最終章」の松重豊、「僕だけがいない街」の石田ゆり子。
  • 評論家

    上野昻志

    原作は未読だが、脚本が奥寺佐渡子と知って期待して見たのだが……いや、マイッタね。最初に、過去に戻れる椅子に座りたいという波瑠の、演技にしても過剰に高飛車な態度に引いたのが始まりで、あとに続く、心温まるエピソードも、なかば白けた感じで見ることになった。極めつけは、最後の、数(有村架純)が亡母に逢いに過去に戻る話だ。彼女は、娘が煎れたコーヒーを飲んで過去に戻ったというのだが、生まれていない娘を未来から呼び出すためのコーヒーは、誰が煎れたのか!?

  • 映画評論家

    上島春彦

    喫茶店の、ある席に座ると過去に戻れるという設定。挿話をつないでいくオムニバスっぽい作りだが、やがて喫茶店の娘さんの側の事情が前面に現れ、話が深まる。細かい規則のせいで、ファンタジーというよりゲーム的な感触が強い。最初、味気ない印象だったが喜劇的な趣向を組み込んであり、設定自体を笑う雰囲気が強調される。問題の規則にがんじがらめになり、主人公は動きが取れなくなるものの、そこを起死回生のプランが救う。悪魔の契約じゃないので安心して見られるのが特徴。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    あざとそうな挿話が並び、〈4回泣けます〉なる直球の惹句にも鼻白み、タイムスリップのルールも細かすぎて、小説ならまだしも映画では不自由にしかならないと思っていると、巧みな語り口に引き込まれる。奥寺佐渡子の脚本だけに「時かけ」同様、寓話と現実との配分も申し分なく、泣きを過剰に見せない塚原演出とも調和。吉田羊が縦横無尽に動き、主舞台となる喫茶店の狭い空間を制するのも良い。とはいえ、この脚本でアニメ化した方が相応しかったのではと思ってしまったのだが。

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