この道の映画専門家レビュー一覧
この道
「ゾウを撫でる」の佐々部清監督が、大森南朋とEXILE AKIRAを主演に迎え、詩人・北原白秋の波乱に満ちた半生を音楽家・山田耕筰との友情とともに映す伝記ドラマ。日本人の心の故郷として親しまれ、100年を経た今でも歌い継がれている“童謡”誕生の裏側を見つめる。共演は「悼む人」の貫地谷しほり、「コーヒーが冷めないうちに」の松本若菜、「ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS」の柳沢慎吾、「ゾウを撫でる」の羽田美智子、「検察側の罪人」の松重豊。脚本を「かぐや姫の物語」「恋は雨上がりのように」の坂口理子、音楽を「忠臣蔵外伝 四谷怪談」「ハードロマンチッカー」の和田薫が務める。
-
評論家
上野昻志
なによりも歌が心に強く響く。「この道」の合唱もさることながら、安田、由紀姉妹の「からたちの花」も懐かしく、それで★ひとつ増えた。大森南朋の、女に弱いというか、おんな子どもに親近する白秋の姿、それを諫める羽田美智子の晶子が記憶に残る。ただ、白秋も山田耕筰も、戦時下には、軍部の要請に従うような詩や曲を作っているのを、ただ生活のためだったとするのは、どうか? むろん、それは企画の意図から外れることだが、菊子が国柱会にいたことも含め、調べたくなった。
-
映画評論家
上島春彦
童謡生誕百年記念企画。北原白秋と盟友の作曲家山田耕筰の交友をユーモラスに語る。その話者は戦後まで生きた山田である。一方、彼らが生きた時代の息苦しさというのも当然あり、そこにもっとこだわってくれたら星も増えたはずだ。二人の最後の語らいの場が映画美術的には極上だが、物語としては曖昧。白秋が戦時体制になじめなかったのは説得的力あり。しかし耕筰の立場はどうだったのか。ごまかされた気がする。むしろ戦時協力者であるしかなかった耕筰という視点もあったのでは。
-
映画評論家
吉田伊知郎
この時代の偉人伝映画で困るのは、主人公の実情は立派とばかりは言えないところで、白秋が隣家の人妻とデキて姦通罪で投獄されたり、山田耕筰と共に戦争へも積極的に協力している事実をどう描くかという点に興味が行くが、口当たり良く処理されているのを上手いと思いつつも、やはり食い足りない。潤沢な予算とも思えないが、京都の撮影所とロケを活用し、奥行きのある空間を作り出した時代の再現は一見の価値あり。女優陣が際立ち、妻の貫地谷、与謝野晶子の羽田美智子が出色。
1 -
3件表示/全3件