母さんがどんなに僕を嫌いでもの映画専門家レビュー一覧
母さんがどんなに僕を嫌いでも
歌川たいじによるコミックエッセイを「南瓜とマヨネーズ」の太賀主演で映画化。幼い頃から母・光子にののしられ、心身ともに傷つけられてきたタイジ。やがて大人になった彼は、心を許せる友人たちと出会い、彼らに背中を押されながら、母親と向き合っていく。共演は「ラブ×ドック」の吉田羊、「レディ・プレイヤー1」の森崎ウィン、「ホペイロの憂鬱」の白石隼也、「ガールズ・ステップ」の秋月三佳、「溺れるナイフ」の斉藤陽一郎、「泣き虫ピエロの結婚式」のおかやまはじめ、「恋人たち」の木野花。脚本を「白鳥麗子でございます!THE MOVIE」の大谷洋介、撮影を「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」の板倉陽子が担当。監督は「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」の御法川修。
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評論家
上野昻志
吉田羊の母さんが怖い。まあ、それだけ、彼女は、精神的に問題のある母親役を良くやっているということなのだが、にしても、ぽっちゃりと愛嬌のある小山春朋に怒りをぶつけるシーンはきつい。こんな母親のもとに育った子はどうなるんだろうと思うが、それを太賀が演じているのが、映画にとって良かった。防御的な薄笑いに、この青年の屈折した内面を窺わせながら、太賀の地の明るさが、深刻になりがちな物語をからっとさせる。金持ちの友だちをはじめ、良すぎる仲間が、やや物足りないが。
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映画評論家
上島春彦
御法川監督の映画では、主人公が作り、操作する仕掛け、物象に主人公自身めいっぱい翻弄されながら究極的にはそれに救われる。それが世界のこんがらがったシステムを救う方策でもある。「二郎」にとっての「マメシバ一郎」や「泣き虫ピエロ」の「ジャグリング」がそうだ。「人生、いろどり」の「葉っぱ」も。ここでは主人公がたまたま参加することになった舞台ミュージカルの存在がそれに当たる。嫌な話でも鑑賞後ポジティブな印象が得られるのは「泣かせるための」映画じゃないからだ。
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映画評論家
吉田伊知郎
親の仕打ちで惨死する子どもが後を絶たない時代に何と古めかしい話か。虐待に耐えかねて家を飛び出した息子が母への思い絶ち難く再会し、何を言われようが食らいついていく。子は親を選べないのだから親を理解して大切にしろというカビの生えた修身的な教えでしかなく、つか芝居とまでは言わないがマゾヒスティックな母子物語にもならず、「愛を乞うひと」より遥かに後退している。今年は映画で際立つ吉田羊が引き続き好演し、熱演になりすぎずに嫌な後味を残さないのが唯一の救い。
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