ゾンからのメッセージの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
いま地球はヘン。“ゾン”なる得体の知れない現象に囲まれた変哲のない町が何を意味するかはともかく、いまやどこでもヘンが日常化している。でも自分に直接的に関係してこない限り、ヘンをやり過ごす。そういう意味ではこの不条理作品はアニメ「ペンギン・ハイウェイ」と通底するものがあり、むろんアニメと違って実写だけにもどかしさもあるが、その分、想像力をかき立てられる。それにしても町の空を無機質に細工しただけで世界のバランスが崩れるとは映画って面白い!!
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
本作と、これに前日譚か続篇として接続しうる鈴木卓爾監督の「ポッポー町の人々」(12)、「ジョギング渡り鳥」(15)、鈴木氏出演の黒川幸則監督作品「ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ」(16)などは近年もっとも刺激的な日本映画だ。そこで描かれた世界の変質は専ら出演者のフィジカルで表現されていたが「ゾン~」では彼らがスタッフにもなったことでその存在は映像効果や美術に憑依し、人物らを包みかつ破られるべき世界=映画が出現した。その素晴しさディケイドベスト級。
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映画評論家
松崎健夫
〈ゾン〉の向こう側はどうなっているのか? この映画は〈ゾン〉の内側を描いているのだが、どうやらかつて〈ゾン〉は存在しなかったようなのだ。現実の世界においても向こう側へと行けない区域が存在する。我々は“境界”の外側で暮らしているが、いつか何かの選別や選択によって我々が“境界”の内側で暮らす社会になりえる可能性へ警鐘を鳴らしているようにも見える。あちら側とこちら側を区切るのは地図上の単なる“線”であって、本当は何もないのだと本作は言わんばかりなのだ。
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