性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々の映画専門家レビュー一覧
性別が、ない! インターセックス漫画家のクィアな日々
インターセックスの漫画家・新井祥と周りのセクシュアル・マイノリティとの交友を記録したドキュメンタリー。自分の体に起きた体験をエッセイ漫画として描く新井と、同居するアシスタントでゲイのこう君や国内外のセクシュアル・マイノリティとの交友を追う。監督は、「駄作の中にだけ俺がいる」の渡辺正悟。ナレーションは、「ちょっと今から仕事やめてくる」の小池栄子。
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映画評論家
北川れい子
こう見えても自分、ヴァギナ付いてます、と語るアゴ髭の漫画家・新井祥。あえて髭を生やしているということは、世間的には“男性”寄り?でも新井祥は自分は自分というスタンスで生きようとする。すでに一家を成しているらしいこの漫画家を私は今回初めて知ったのだが、サバサバした柔軟さで自分とその周辺の人々をカメラに晒す姿は人として魅力的で、このドキュメンタリー、それに尽きる。同居している茶髪の助手との関係も、友情以上、異母兄弟ふうで、人間は性別より相性?
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
性的なアイデンティティが何ら不安のない一般的な規範内にある私には驚くことようなことや実感として理解できないことが語られる。そこが面白かったし学ばされた。先ごろ衆院議員杉田水脈によるLGBT差別発言が話題になったときに本作を思い出さざるを得なかった。本作の主人公新井祥氏が何に対してあれほど突っ張り、戦っているのか。異なるものを理解せずそれを脅威だと認識し迫害する偏狭さとだ。新井氏の言う“人生ショー”の成功を祈る。切実な発信であるドキュメンタリー。
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映画評論家
松崎健夫
破れたトタン屋根の古ぼけたアパート。カメラが部屋の中に入ると、そこはリノベーションされたオシャレな空間になっている。外観と屋内との印象が異なることを示したこのオープニング映像は、地理的な情報を提示しているだけではない。取材対象となるふたりの外見と内面に抱えるものとが異なることをメタファーにしながら、本作の主題を宣言してみせているのだ。エッセイ漫画を挿入することで観客に情報を提示する手法は、ふたりの職業に適いながら深い理解を促す効果を生んでいる。
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