妻の愛、娘の時の映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
女優として監督として堂々たるキャリアをもつシルヴィア・チャンの監督・主演作。物語と登場人物の配置がすばらしい。父親の墓を移そうとする都会の女性教師と、それを阻止しようとする田舎の結婚証明書をもたない父の第一夫人による諍い。それをテレビ局で働く若い娘が引いた位置から相対化する。テレビ番組など大げさすぎる道具立てと、俳優への演劇的な演出に作為がほの見えて、リアリティが感じられず、感動したい場面でも微妙に感情移入できなかった。映画って本当に難しい。
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映画評論家
きさらぎ尚
三世代の女性による家族のごたごたから見えてくるのは、彼女たちの〈愛されたい〉〈愛したい〉と思う気持ち。題材のお墓問題はさておき、面白いのは強い女性陣と、男性との関係性。真面目だが勝気で口うるさく、時に突飛な行動に走るにS・チャン演じる妻に対して、物静かで辛抱強い夫(演じている田壮壮◎)。自分を見失わず逃げもしない娘の彼氏。情感とカラッとした爽やかさ。その調合が絶妙な、味わい深いファミリードラマだ。ドラマをうまくまとめた自作自演のチャンを称賛する。
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映画系文筆業
奈々村久生
亡き夫が眠る土の上に身を投げ出して墓の移転を阻止しようとする老妻。その強烈な画だけでもこの映画は勝ったようなものだ。最初の妻を置いて家を出たきり生きて戻らなかった男は、別の土地で違う女性と結婚生活を送ったが、どちらも法的な婚姻関係を証明するものは行方不明。親娘三代のドラマに中国社会の仕組みや歴史がさりげなく織り交ぜられ、田壮壮監督の渋い演技も味がある。シルヴィア・チャン恐るべし。女たちのエゴ、業、愛を艶やかに映し出すリー・ピンビンの映像が美しい。
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