インサイド(2016・西=米)の映画専門家レビュー一覧

インサイド(2016・西=米)

音のない世界で恐怖に襲われるエクストリーム・シチュエーション・スリラー。交通事故で夫を失い、自身も補聴器がないと耳が聴こえない障害が残ったサラは、お腹の子どもを心の支えに生きていた。ある晩、見知らぬ女が家に侵入し、執拗にサラを殺そうとする。出演は、「P2」のレイチェル・ニコルズ、「マルホランド・ドライブ」のローラ・ハリング。監督は、「スペイン一家監禁事件」のミゲル・アンヘル・ビバス。脚本は、「REC/シリーズ」のジャウマ・バラゲロ。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    深夜にひとりで観たいB級スリラー。妊娠して出産日が迫っているときに、絶対に遭遇したくないできごとが次々に起きる。途中まで夜の闖入者の顔を見せない演出、妊婦の白いワンピースが血だらけになっていく衣裳、懐中電灯を使って闇に隠れる恐怖を際だたせる場面など、監督と撮影チームによる映像設計が良い。帝王切開への嫌悪感が、妊婦のお腹に突き立てられる犯人のナイフにつながり、白いシートで覆われたプールのラストシーンまで、イメージの連環で見せ切った手腕も見事。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    出産を控え、交通事故で補聴器なしでは音が聴こえなくなった女性が、正体不明の女性に襲われる。そんなスリラー映画かと思いきや、話は想像を超えていた。あろうことか、謎の犯人は陣痛促進剤オキシトシンを妊婦に投与したのだ!? ということは襲った目的は異常な状況下で出産させることだったのか? そうだとすればかなり倒錯したホラーである。補聴器が壊れて、視覚のみならず、音が無くなることによる恐怖の演出効果もあり、不気味さはいや増すが、なんとも後味が悪い。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    謎の女が最強すぎる。その戦闘力は素人の一般女性の限界をはるかに超えており、どう考えてもヒロインに勝ち目がなさそうに見える時点でアウト。どんなに頑張って応戦してもヤラセっぽく思えてしまう。そもそも女の狂気も出オチ感が強く、筋書き通りの展開が否めない。その点リメイク元の「屋敷女」で同じ役を演じたベアトリス・ダルの説得力は半端なかった。ヒロインの耳が聞こえない設定も音楽効果的な印象に留まり、失聴した状態であることにほとんど意味が感じられなかった。

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