2重螺旋の恋人の映画専門家レビュー一覧

2重螺旋の恋人

米国の女性作家ジョイス・キャロル・オーツによる短編小説をフランソワ・オゾン監督が大胆に翻案したサスペンス。精神分析医ポールと恋に落ち、同居を始めたクロエ。ある日、クロエは街でポールそっくりの男と出会うが、彼はポールと双子で同じ精神分析医だった。出演は「17歳」のマリーヌ・ヴァクト、「午後8時の訪問者」のジェレミー・レニエ、「映画に愛をこめて アメリカの夜」のジャクリーン・ビセット、「夏時間の庭」のドミニク・レイモン。音楽を「婚約者の友人」のフィリップ・ロンビが担当。一般公開に先駆け『フランス映画祭2018』にて上映。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    精神分析学をかじった者であれば、ハマってしまうガジェットに満ちている。スレンダーで中性的な魅力を発するクロエの原因不明の腹痛を、精神分析医が意識下に抑圧されたストレスとして治療するのが最初の見どころ。その結果、医師と患者のあいだに転移が起き、彼女は分析医の恋人となる。ところが、その分析医にそっくりの外見を持つ、傲慢で挑発的なもう一人の分析医が現れる。古典文学の味わいをたたえながら、強迫症状、転移、分身といったモティーフで見せ切った手腕はお見事。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    物語のキーワードが双子であることに加え、寄生性双生児という伝奇めいた話も登場するので、DNAの二重螺旋の鎖の相補関係を連想させる邦題はまず◎。双子の精神科医に惹かれる独身女性という話の起点は、ミステリアス&トリッキーな心理の迷宮へ。何が現実でどこからが妄想? あれ? タバコを吸っていたのは双子のどっちだった? 等々、話が進むにつれて、謎は深くなるばかり。女性の本質を描いてきたオゾンだが、今作はエレメントに凝りすぎて本質が見えにくいのが惜しい。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    フランソワ・オゾンと性は切っても切れないテーマだ。それは甘い夢を見せるものではなく、自己と他者のバトルであり、そういうものとしての性行為への飽くなき探究心には目を見張る。オゾンの濡れ場はバイオレンスシーンに近く、行為者が快楽に耽るような演出にも乏しい。本作でも「17歳」で瑞々しい肢体を披露したマリーヌ・ヴァクトがハードな要求に応えているが、自分と他人の交錯は「上海から来た女」「燃えよドラゴン」に連なる鏡の描写に至り、激しい生存競争を繰り広げるのだ。

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