フォルトゥナの瞳の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
百田尚樹の原作は知らないが、映画はライトノベルならぬライトSF系で、つい引っ張られるままにズルズルと最後まで観てしまったが、そんな自分が腹立たしい。“死を目前にした人間が透けて見える”という設定。しかも寿命や自然死ではなく“事故絡みの死”限定。そんな眼力を持ってしまった主人公の戸惑いと責任感が、丁寧というか、くどくどと描かれていくが、飛行機の墜落事故を発端にした死の、そして事故の大盤振舞は、いくら映画の中のことでも気色ワルい。ヒロインのオチも。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
有村架純は労働者階級のヒロインだと思ってる。坂元裕二脚本のドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の印象が強いからか。贅沢ではないのに上品で、働き者っぽく、健康的なふくよかさがあって。案外他に人材のいないここにはまる役をやるとものすごい戦闘力を発揮する彼女だが本作もそれであった。加えて近年のアメコミヒーローものが抱える救済しきれぬ罪悪感の話も。ただラストのもうひとつ足したドンデン返し(原作に由来)は変。それを秘密にするなよ! と。
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映画評論家
松崎健夫
運命の女神の瞳が導く〈運命論〉は「自分さえ良ければそれでいい」という利己的な傾向をよしとする社会に対するアンチテーゼに見える。相手を“慮る”という言葉は、いつの間にか(本来の意味とは異なる用法で)“忖度”なる言葉にすり替わっている。予知能力や世界を救うというレベルではない「個人で出来る範囲のこと」が何であるかを考えさせながら、その均衡を揺らす北村有起哉の演技が出色。彼の発言が正論のようで違和感を覚えることは、観客に“慮る”意味を再考させるのだ。
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