七つの会議の映画専門家レビュー一覧

七つの会議

直木賞作家・池井戸潤によるクライムノベルを「祈りの幕が下りる時」の福澤克雄監督が野村萬斎主演で映画化。ある日、中堅メーカーのトップセールスマン・坂戸がパワハラで訴えられ、異動処分が下される。訴えた当事者は、所謂ぐうたら社員の部下・八角だった。共演は「クリーピー 偽りの隣人」の香川照之、「相棒」シリーズの及川光博、「MOTHER マザー」の片岡愛之助、「孤狼の血」の音尾琢真。脚本を「シャカリキ!」の丑尾健太郎と「祈りの幕が下りる時」の李正美が担当。音楽は「HERO」の服部隆之。
  • 映画評論家

    北川れい子

    娯楽映画としての後味が微妙。主人公兼任で狂言回しを演じている野村萬斎の、歌舞伎仕立ての大仰な表情や口調が周囲の空気を乱していて、まるで独りパロディのよう。札付きのグータラ社員という役どころ。そんな彼が引き金となって、芋蔓式に会社の、そして親会社の悪事や欺瞞が露呈するというのだが、このくだりもまんまパロディ。しかもキャラクターも安っぽい。営業と経理部の子どもじみた確執や、ドーナツの無人販売騒ぎも観ていてこっ恥ずかしい。豪華な男優人も無駄使い。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    欠陥品とリコールについてチャック・パラニューク『ファイト・クラブ』によれば、流通する製品数(A)に推定される欠陥発生率(B)をかけ、さらに一件あたりの平均示談額(C)をかけたA×B×C=X、の、このXがリコールをしない場合のコストでXがリコールのコストを上回ればリコールがされ、下回ればされない、とある。これに日本的な肉付け(隠蔽など)をしたものが池井戸小説の世界であり、あともう少し世か人に事あらばこれは恐るべきリアル社会派として立ち上がる。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    企業という巨大な組織の中でいち社員ができることは限られている。それでも不正に対して抗い“千丈の堤も螻蟻の穴を以て潰ゆ”と信じることが重要であると描きながら、本作は厳しい現実をあえて提示する。「この世から不正はなくならない」という諦念は、日本の企業体質の伝統であるが、この諦念を良しとしない“鈍感なる不屈”のあり方を野村萬斎が池井戸節をもって体現。原作のエッセンスを凝縮させたスピード感ある展開、そして社会性とエンタテインメント性のバランスが絶妙。

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