世界が愛した料理人の映画専門家レビュー一覧

世界が愛した料理人

    当時スペイン史上最年少でミシュラン三ツ星シェフを獲得した料理人エネコ・アチャが、料理の神髄を探求するドキュメンタリー。最高の料理に必要なものや料理に込めるべき魂を求め和食に辿り着いた彼が、寿司店すきやばし次郎はじめ日本の名店をめぐっていく。エネコ・アチャがプロデュースするアスルメンディのほか、スペインのラサルテやサンパウ、フレンチのジョエル・ロブション、日本料理の龍吟、寿司店すきやばし次郎といった、ミシュランガイドで三ツ星を獲得したレストランが登場。
    • ライター

      石村加奈

      素材はいいのに、調理法を間違えたような残念な印象だ。史上最年少でミシュランの三ツ星を獲得したスペイン・バスク地方の料理人・エネコの「(料理における)魂とは何か」というロマンティックな問いと、世界最年長の三ツ星シェフ・小野二郎の達観した答え(感動的な人生訓!)がうまく呼応していない。同じ日本料理人でも、山本征治や石田廣義夫婦の方が、エネコの疑問に率直に答えてくれたのではないか? と思う。斬新な編集も、それぞれの哲学を活かしきれず消化不良。もったいない。

    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      バスク自治州の若きシェフ、エネコ・アチャのポジティブなオーラは見ていて気持ちがいい。彼の料理を食べたことはないが、彼の先輩ベラサテギの料理はバスクで食べたことがあり、素晴らしかった。2人で海中ワインセラーから引き揚げたチャコリ(バスクの微発泡白ワイン)を船上で試飲するシーンには同志的交感が満ちる。翻って日本ロケ分は平凡。「龍吟」を削ってでも「壬生」をもっと掘るべきだった。「すきやばし次郎」のパートは「二郎は鮨の夢を見る」の同工異曲の感が拭えない。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      すきやばし次郎の映画は5年前に「二郎は鮨の夢を見る」があって。今回もその繰り返し的で、あまり新味はない。スペインの三ツ星レストランのシェフが登場して、そのワインや野菜づくりの取り組み方、料理に対する哲学などが語られる。なるほどと思う。だけど料理は見るものじゃなく口にするもの。いくら語っても、その味は届かない。そこを工夫するのが演出なのでは。なんだかカタログ映画というかBSの番組に見えてきて。スクリーンで観るにはもうひとつ奥深さが必要なのでは。

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