飢えたライオンの映画専門家レビュー一覧

飢えたライオン

フェイクニュース全盛の現代に潜む人間の邪悪な欲望を焙り出すドラマ。高校生の瞳のクラスの担任が、淫行容疑で警察に連行される。これをきっかけに、校内で瞳が担任と関係があったとの噂が流れ始める。デマはすぐに忘れられると思っていた瞳だったが……。出演は「1+1=1 1」の松林うらら、「青夏 きみに恋した30日」の水石亜飛夢。監督は「子宮に沈める」の緒方貴臣。
  • 映画評論家

    北川れい子

    緒方作品を観るのは「体温」「子宮に沈める」、そして今回と3作目だが、孤独や疎外感を切り口に、社会のダークサイドを抉っていくその作品歴は、安易な救いがないだけに、観ているこちらの体力、気力がかなり消耗する。“情報の暴露”を描いたこの作品は特にそれが著しい。しかも前2作同様、救いはともかくその先の展望が全くないので、不快なまでにリアルな再現ふうドラマという印象は否めない。場面の切り替えごとの黒い画面も、世界を閉じ込めているようで息苦しい。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    映画らしくあることに背を向ける異様な険しさ。その姿勢と画面は出来事の苛烈さを表すため独自の映像のスタイルを発明しようとした作品「私は絶対許さない」を連想させもするが、それよりはむしろ、おわかりいただけただろうか、のナレーションが流れる「本当にあった!呪いのビデオ」に近づいているかもしれぬ。そう、わかってくる。段々面白くなるのだ。意図なく撮られ、誰にも見られない映像をベースとすること。そこにも本作の主題である、安易な主観の洪水への警戒がある。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    タイトルに〈目〉のアップが重なるが、〈目〉=見ることは本作のテーマのひとつ。基本的にカメラは、離れた位置から現場を“覗き見”しているようなアングルで構成。印象的なのは映画館でスクリーンを注視する客席を映し出したカットだ。ホラーに恐怖し、ドラマに涙する劇中の観客にとって、映画と現実は当然のことながら別世界。そのモンタージュが、世の“無関心”を抽出させている。表情の変化を排除して外見と内面の乖離を演じてみせた松林うららの演技アプローチも素晴らしい。

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