銃の映画専門家レビュー一覧

芥川賞作家・中村文則のデビュー作を「百円の恋」の武正晴が映画化。大学生のトオルは、男の死体と共に放置されていた拳銃を拾い、アパートに持ち帰る。トオルは銃に魅了されていくが、テレビで遺体発見のニュースが流れ、ひとりの刑事がトオルを訪ねてくる。出演は、「武曲 MUKOKU」の村上虹郎、「巫女っちゃけん。」の広瀬アリス、「万引き家族」のリリー・フランキー。
  • 映画評論家

    北川れい子

    モノクロ映像にモノローグを入れた演出。拾った銃と迷走する自意識。女。セックス。そしてワケ知りの警官。が、ゴメン。村上虹郎のハードボイルド気取りの幼稚なナルシシズム演技は、演出からしてフィルムノワールごっこのレベルで、しかもあくまでもポーズだけ、その薄っぺらさに体中がムズムズ。そういえばこの「銃」は、今回の東京国際映画祭のスプラッシュ部門の監督賞と、村上虹郎の東京ジェムストーン賞の二つを受賞しているが、何やら各審査員たちが忖度したような。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    ドストエフスキー『罪と罰』ベースの映画というのは世にどれほどあるのか。つい最近久松静児が1953年に撮った「地の果てまで」という原作忠実翻案(脚本は新藤兼人)の“罪と罰映画”を観たが、不変かつ普遍を感じた。ブレッソン「スリ」はもちろんスコセッシ「タクシードライバー」などにもラスコリニコフの精神的兄弟がいるわけで。本作は原作からして『罪と罰』インスパイアであり、それが村上虹郎主演、モノクロで、ポルフィーリィがリリー・フランキー。ど真ん中剛速球。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    モノクロ・夜・雨・死体、ファーストカットから「困難なことをやるぞ!」という宣言と、製作・奥山和由の名前は〈シネマジャパネスク〉の記憶を蘇らせる。そして、現実と虚構が曖昧な“父殺し”を描いた白昼夢のような終幕は、石井隆監督の下で助監督経験のある武正晴監督ならではとも解せるが、その兆候は予め演出されている。例えば、主人公の部屋でステレオから流れてくる音楽。劇中の現実で流れている音楽は、やがて劇伴と融合され、その境界が曖昧になっていることが窺える。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事