エンジェル、見えない恋人の映画専門家レビュー一覧
エンジェル、見えない恋人
姿が目に見えない少年と盲目の少女の恋を幻想的な映像美で綴るラブストーリー。心を病み、施設に入ったルイーズは男の子を生む。エンジェルと名付けられた彼は、姿が目に見えなかった。エンジェルは成長すると施設を抜け出し、盲目の少女マドレーヌと出会う。制作は、「神様メール」のジャコ・ヴァン・ドルマル。監督は、「フォーエヴァー・モーツアルト」などに出演している俳優のハリー・クレフェン。出演は、「エル ELLE」のフルール・ジフリエ、「わたしたちの宣戦布告」のエリナ・レーヴェンソン。
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批評家、映像作家
金子遊
ファンタジーであるし、繊細な心の動きを描いたラブストーリーだと理解しているが、些細なディテールが気になり、物語に入りこめないところがあった。野暮を承知でいえば、透明人間の赤ん坊が生まれたとして、オムツくらいつけるのでは? 彼女とデートするとき、透明な青年は裸で会っていたのだろうか? ウェルズのように透明人間がどうして見えないのか、色素と光の屈折で解説せよとまではいわないが、「このような設定だ」と簡単な説明があれば、もう少しお話に没入できたのかも。
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映画評論家
きさらぎ尚
姿が見えない男の子と目が見えない女の子のラブストーリーは、設定からしてユニーク。さらにスクリーンにその男の子エンジェルの姿を見せないというアイディアも意表を突く。カメラはほぼ全篇が彼の視点になっていて、互いを感じ合うことによって恋が成就。コミュ力が幅を利かす今の世の中にこんな関係があってもいい。いずれにせよ物語は、現実と妄想の狭間でドラマを紡ぐことに長け、奇抜とカルトの境界の、微妙な感性に多くのファンをもつ製作のJ・V・ドルマルの影響大とみた。
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映画系文筆業
奈々村久生
「かごの中の瞳」に続いて盲目のヒロインものだがこれはもうほとんど実験映画。イメージフォーラム系の自主映画を志すなら一度は夢想する一本なのでは。美少女の被写体と彼女を見つめるPOVショットで構成されるカメラワーク、耽美的な映像、エロティシズムと背徳の匂いから展開する超現実。主体が透明人間なのは斬新だが、主観ショットである限りむしろそれは問題にならない。少女の目が見えていないときはファンタジーだった世界が、視覚を得た途端にホラーに転じるのが面白い。
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