ザ・ファブルの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
冒頭の血と死体の大盤振舞にアソビを加えた演出が効果的で、以降のヤバイ場面も屈託なく楽しめる。そして岡田准一のおとぼけ演技。いつも楷書で書いたような演技が多いのに、今回はひらがな、カタカナふうの演技で殺しを禁じられた殺し屋を演じ、しかも超ネコ舌という設定、シリーズ化してほしいほど。終盤の数十人のスタントマンが参加しての工場内アクションも、人もカメラもよく動き、感心する。柳楽優弥の「ディストラクション・ベイビーズ」ふうキャラと演技も小気味いい。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
南勝久『ナニワトモアレ』は結構熱く読んでた。その主人公グッさんのもっぱら気合いでやりきるケンカ描写はヤンキー世界におけるリアリズムの最長不倒距離をやりきったものだと思うがそこを越えての『ザ・ファブル』、現在も堪能してます。その、暴力のプロがそれを封印して普通を生きる話、実写化するとしてこんなの演じられる人いる? に対して、まったく似てないのにそのキャラを見事に翻案再現した岡田准一がやはり良い。Tシャツ短パン姿のバルクがヤバい。壁虎功もヤバい。
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映画評論家
松崎健夫
大阪には“こなもん”が多い。それは、たこ焼きやお好み焼きなど小麦粉を原料とする食べ物を指すが、水でといた生地を焼くので基本的に熱い。それゆえ「殺し屋が殺しを封印される」という弱点と「猫舌の男が“こなもん”の聖地に渡る」という弱点とが不思議な符合を生み出すのだ。また、大阪は会話のテンポが早い。同様に、岡田准一の身体能力を活かしたアクションは、ワンカットではなく細かいカットを割ることでテンポを生み出している。つまり大阪が舞台であることは必然なのだ。
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