マチルダ 禁断の恋の映画専門家レビュー一覧

マチルダ 禁断の恋

帝政ロシア最後の皇帝と世界的バレリーナとの禁断の恋を綴る実話に基づくドラマ。1800年代末サンクトペテルブルク。皇位継承者であるニコライ2世は、バレリーナのマチルダと恋に落ちる。だが、滅びゆく帝国と共に二人の情熱的な恋は引き裂かれようとしていた。出演は「ブルーム・オブ・イエスタディ」のラース・アイディンガー、「ゆれる人魚」のミハリナ・オルシャンスカ、「ハードコア」のダニーラ・コズロフスキー。撮影監督は「神々のたそがれ」のユーリー・クリメンコ。監督は『チェチェン包囲網』のアレクセイ・ウチーチェリ。
  • ライター

    石村加奈

    戴冠式からマチルダとの恋の回想、再び戴冠式へ紡がれる物語では、ステージ上で衣裳が少しはだけただけで(とは言え十分エロいが)、ニコライ二世の心を奪ったマチルダだったが、やがて渾身の叫び声すら届かなくなった二人の距離感が圧倒的に描かれる。戴冠式後の、ホディンカの原での事故対応、皇后とのキスへの一連のシーンでは、ニコライ二世の、皇帝としての力量(父アレクサンドル三世の列車の脱線事故時との痛烈なる対比!)より、善良さにさりげなくフィーチャーしていて好感。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    ロシアはすっかり普通の国になったのだと思う。帝政末期の宮廷をひるむことなく優雅な美術セットと共に披露する本作にとって、帝国主義を打倒したソ連映画の記憶はなかったも同然だ。最後の皇帝ニコライ2世とバレリーナの悲恋というM・オフュルス的主題ながら、革命の前兆、時代の端境という視点が乏しいのが惜しい。パラジャーノフ「スラム砦の伝説」、ゲルマン「神々のたそがれ」を手がけたユーリー・クリメンコの撮影をただただ全力で堪能すべき作品なのかもしれない。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    おお、ロシア皇帝と踊子の許されざる恋! なんとクラシカルな。しかもそこに母后、婚約者も絡み、日本の大奥ものの趣きも。撮影・セット・衣裳とどっしりした重みと深みがあって雰囲気もいい。よくないのは演出で、彼女と彼が運命的な出会いをする劇場の場面など、二人の視点が交錯するカットつなぎがチグハグで戸惑う。どうもこの腰が落ち着かない展開は、米メガヒット映画の悪影響では。にしても今ごろニコライ2世に同情的な映画が露国でなぜ作られたんだろ? それが一番の興味。

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