ボーダーライン:ソルジャーズ・デイの映画専門家レビュー一覧

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ

国境麻薬戦争の闇を捉えたサスペンス・アクション「ボーダーライン」の新章。メキシコからのテロリスト流入に危機感を抱くアメリカ政府から、密入国ビジネスを仕切るカルテルを混乱に陥れる命を受けたCIA捜査官マットは、暗殺者アレハンドロに協力を要請する。出演は「ボーダーライン」のベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ジェフリー・ドノヴァン、「トランスフォーマー/最後の騎士王」のイザベラ・モナー、「オリエント急行殺人事件(2017)」のマヌエル・ガルシア=ルルフォ、「ゲット・アウト」のキャサリン・キーナー。監督は「暗黒街」のステファノ・ソッリマ。脚本を「ボーダーライン」「ウインド・リバー」のテイラー・シェリダンが務める。
  • 翻訳家

    篠儀直子

    ヴィルヌーヴの「ボーダーライン」は、暴力と絶望の彼岸にある祈りにも似た美しさがわたしはとても好きだったのだけど、続篇にあたる本作は、アクションスリラーとして普通に楽しめる作品。とはいえテイラー・シェリダンイズムは健在だし、前作の映像美を引き継ごうとしているかのようなショットもいくつか。デル・トロもブローリンもI・モナーも魅力的だが、音楽の付け方にやや納得いかないのと、演出部の不注意だとそしりたくなる箇所がいくつか見られたのとで、星の数は抑えめ。

  • 映画監督

    内藤誠

    メキシコ麻薬戦争を素材としていて、監督は違うけれど、製作・脚本を同じくする前作「ボーダーライン」や、ドキュメンタリーの「カルテル・ランド」とともに、この作品も見応え充分。トランプ大統領が今も解決できない問題なので、いろいろなアプローチもできる。CIAのジョシュ・ブローリンがカルテル一掃を目的に屈折した過去をもつコロンビア人の元検察官デル・トロを雇ったので、話が複雑になる。兵士としての任務より私的人間関係を選び、国境をさまようデル・トロに感情移入。

  • ライター

    平田裕介

    冷酷非情なデル・トロとJ・ブローリンが主人公にシフト。さらに麻薬戦争の渦中に飛び込むのではなく、新たに戦争を勃発させる物語となっているので、前作のような深淵を覗いてしまった恐怖も衝撃もドラマ性も薄くなっている。かといってバイオレンスだけに徹してはおらず、暗黒版「ペーパー・ムーン」と呼びたくなるデル・トロとカルテル首領の娘との殺伐としながらも意外と染みる国境越えの模様を用意していたりする。中東系テロがメキシコからアメリカ入りするアイデアは新鮮。

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